テイクバック逆Lでは肘が上がらない、肩の外旋が速く大きくなる

ピッチング
  1. オーバーハンドスローでのオーソドックスなテイクバックとinverted(逆L、逆W、等)なテイクバックの比較
  2. オーソドックスなテイクバック
    1. 2018年に野球殿堂入りしたジャック・モリスの投球フォーム
    2. ジャック・モリスJack Morris
  3. inverted(逆L、逆W、等)なテイクバック(野球界で流行しているが問題が多い)
    1. ジョン・スモルツJohn Smoltz
    2. ケリー・ウッドKerry Wood
    3. 問題点
    4. ロジャー・クレメンス
    5. ノーラン・ライアン
    6. 肘が一番高く上がるポジション
    7. inverted(逆L、逆W、等)なテイクバックの問題点
      1. 肘が高く上げにくいので肩関節が外旋しにくい。したがって、外旋させるには大きな力(外旋トルク:回転力=力×距離)が必要となります。
      2. 肘が高く上がらないと、肩甲骨の後傾もむづかしくなります。
  4. まとめ
      1. オーソドックスなテイクバックの方が肩、肘に無理なストレスがかかりにくい。オーソドックスなテイクバックでは球速が上がりにくいかというとそうでもありません。
      2. 球の速い投手では体の横回転が速い投手が多いですが、この場合腕の角度が上体の軸に対して垂直になりやすく、肩関節の急速な外旋がおきやすいので、肘、肩に大きなストレスがかりやすいという落とし穴があります。体の縦回転をしてから体の横回転をするのが良い。
      3. 無理な力をかけず効率良く速い球を投げるには、下半身を主体とし上半身は脱力したピッチングが良いのですが、inverted(逆L、逆W、等)なテイクバックは、根本的に上半身に力を入れて投げるパワーピッチャーのためのものであり、脱力したピッチングとは正反対の投げ方と言えます。
      4. 上半身に力が入ると、脱力した場合よりも肩関節の可動域が狭くなるようです。
      5. inverted(逆L、逆W、等)なテイクバックの新たな問題点は、肩関節の外旋可動域は大きくなり(前腕が背中側に倒れやすくなる:大きなlay backが可能)、ピッチングに有利になるとも考えられますが、同時に肩関節の内旋可動域は狭くなることです。外旋可動域の増大よりも内旋可動域の減少が大きいと要注意です。内旋可動域の減少が大きいと、ピッチングの減速期に関節唇に大きな力がかかるようです。 肩関節の外旋可動域が大きくなる要因は、上腕骨の肩関節に近い部分にねじれが起き、骨が変形するそうです。これは少年野球の投手でもすでに起きているそうです。ピッチングする方の腕と、ピッチングしない方の腕とでは肩関節の外旋可動域に違いが見られるそうです。それほど無理な力がピッチングの際にはかかるということです。ピッチングフォームによっても、肩関節の可動域に大きな違いが出るともいえます。 肩関節周りの可動域は肩関節(肩甲骨と上腕骨との関節)だけでなく、肩甲骨自体の可動域の大きさ、脊椎のしなりによっても変わるので、全体的にバランスのとれた可動域の広さを大きくすることが大事です。
      6. すでにinverted(逆L、逆W、等)なテイクバックをしている方でも、工夫すれば最小限の対策で怪我をしにくい投球フォームに変える方法がないわけではありません。すでに引退した選手で、inverted(逆L、逆W、等)なテイクバックをしていながら、250勝、300勝以上の勝ち星を上げた投手の特徴を調べれば、対策のヒントは得られます。

オーバーハンドスローでのオーソドックスなテイクバックとinverted(逆L、逆W、等)なテイクバックの比較

オーソドックスなテイクバック

オーソドックスなテイクバックは前腕を両肩を結んだ面内で前腕を起こす方法です。
利点は肩関節の外旋を早めに準備できるので、コッキングを早めに完了できるので、肘を高くあげやすいことです。

2018年に野球殿堂入りしたジャック・モリスの投球フォーム

ジャック・モリスJack Morris

通算254勝186敗、防御率3.90

1977から1994まで18年間、39歳までプレイ。速球、スライダー、スプリット・フィンガード・ファストボールが得意球。

 

前腕は肩甲骨平面内で前腕は肘の屈曲で、コッキングが成立します。肩関節の外旋は緩やかに起きます。肩甲骨平面内で前腕がコッキング(前腕が地面と垂直近くになる)が起きるので、肩関節に無理な力がかかりません。肘も抵抗なく高く上がります。

inverted(逆L、逆W、等)なテイクバック(野球界で流行しているが問題が多い)

inverted(逆L、逆W、等)なテイクバックとは、テイクバックで一度肘を曲げ、前腕(肘から手に向かう部分)を地面に向け(水平よりも下向き)ている時間が長いテイクバック。肩関節を内旋させ、それから急速に外旋させなければいけないので、肩関節に無理な力がかかります。コッキングは肩甲骨平面内で行われず、前腕は肩甲骨平面内を外れ、体の正面側から起きるので、下半身をうまく使わないとコッキングに時間がかかります。速く行おうとすると、急速な肩関節の外旋が起きます。肘も高くは上がりません

肘の怪我では側副靱帯再建手術(トミー・ジョン手術)が多く、トミー・ジョン手術をして大リーグ殿堂入りした投手は、現在のところジョン・スモルツただ一人です。トミー・ジョン本人は288勝しましたが、いまだ殿堂入りをはたしていません。300勝していれば文句なく殿堂入りできていました。

ジョン・スモルツは四度の肘の手術を受けています。32才のときに、トミー・ジョン手術を受け、41才で肩の手術も受けました。

ジョン・スモルツJohn Smoltz

通算213勝155敗、154セーブ、防御率3.26。2015年野球殿堂入り。この年は、ランディー・ジョンソン、ペドロ・マルチネスも殿堂入りしています。

ケリー・ウッドKerry Wood

大リーグにデビューした1998年、20歳のとき、大リーグタイ記録の一試合20三振を奪いました。一試合20三振を達成したのは、ランディー・ジョンソン、ロジャー・クレメンス(2度)、マックス・シャーザー合わせて4人しか達成していません。大リーグにデビューした年のプレイオフで肘を痛め、翌年にトミー・ジョン手術を受けています。2012年に引退。
通算86勝75敗、防御率3.67

問題点

①肩関節の外旋が内旋に切り替わるときに、前腕の慣性により肘、肩に大きなトルクが発生します。

②コッキングの準備ができる前から体の横回転が起きている。

③ ①に②が合わさると、①の効果は飛躍的に高まります。

ロジャー・クレメンス

最速100mphの速球 、スプリッターが大きな武器であった。サイ・ヤング賞は史上最多の7度受賞。薬物疑惑のためか、まだ大リーグ殿堂入りできていません。

通算354勝184敗、防御率3.12

オーソドックスなテイクバックのためか、22歳のときに肩を手術して以来、大きな怪我はしませんでした。

1986年ALCSアメリカン・リーグ・代表決定戦時の投球フォーム

1986年、大リーグ初となる1試合20三振の新記録を作った時の投球フォーム(23歳当時、横からの映像)

ノーラン・ライアン

1969年メッツ時代はオーソドックスなテイクバックでした。

通算324勝292敗、防御率3.12

1969年メッツがワールドシリーズを制覇したときの投球フォーム(22歳当時、リリーフで登板)

肘が一番高く上がるポジション

肘が一番高く上がるポジションは肩甲骨平面で前腕がコッキング(地面ではなく空を向いている)される姿勢です。
この状態は肩関節が90度外旋された状態です。
肩関節に最も無理なく最大外旋させるには、実際自分で試して見ると、整形外科学で使用される用語であるゼロポジションの角度が良いようです。実際には、肩甲骨の後傾も大きく寄与しています。脊椎の後傾も加えれば、前腕の後傾(lay back)も大きくできます。

inverted(逆L、逆W、等)なテイクバックの問題点

肘が高く上げにくいので肩関節が外旋しにくい。したがって、外旋させるには大きな力(外旋トルク:回転力=力×距離)が必要となります。

肘が高く上がらないと、肩甲骨の後傾もむづかしくなります。

上腕骨の肩関節近くがねじられ(後捻)骨が変形するそうです。また、肩関節の可動域が狭くなるそうです。この現象は日本の少年野球でも起きています。肩関節の外旋可動域は大きくなりますが、逆に内旋可動域は狭くなります。

内旋可動域が狭くなると、肩の怪我(関節唇)も起きやすくなります

 

自分で意識して外旋させるか、前足を着地してから、急速な上体の軸の横回転による、前腕の質量による受動的な肩関節の外旋トルクがかかり、急速な外旋がおきるか、あるいはその両方がおきるかのいずれかです。

前足を着地してから、急速な上体の軸の横回転が起こる際には受動的な肩関節の外旋がおきるので、肘の高さが両肩を結んだ線と同じ位置に長くあると怪我をしやすいということです。
したがって、前足を着地してからは、上体の縦回転を意識した方がよいということです。これはオーソドックスなテイクバックでもinvertedな場合でも言えます。

まとめ

オーソドックスなテイクバックの方が肩、肘に無理なストレスがかかりにくい。オーソドックスなテイクバックでは球速が上がりにくいかというとそうでもありません。

球の速い投手では体の横回転が速い投手が多いですが、この場合腕の角度が上体の軸に対して垂直になりやすく、肩関節の急速な外旋がおきやすいので、肘、肩に大きなストレスがかりやすいという落とし穴があります。体の縦回転をしてから体の横回転をするのが良い。

無理な力をかけず効率良く速い球を投げるには、下半身を主体とし上半身は脱力したピッチングが良いのですが、inverted(逆L、逆W、等)なテイクバックは、根本的に上半身に力を入れて投げるパワーピッチャーのためのものであり、脱力したピッチングとは正反対の投げ方と言えます。

上半身に力が入ると、脱力した場合よりも肩関節の可動域が狭くなるようです。

inverted(逆L、逆W、等)なテイクバックの新たな問題点は、肩関節の外旋可動域は大きくなり(前腕が背中側に倒れやすくなる:大きなlay backが可能)、ピッチングに有利になるとも考えられますが、同時に肩関節の内旋可動域は狭くなることです。外旋可動域の増大よりも内旋可動域の減少が大きいと要注意です。内旋可動域の減少が大きいと、ピッチングの減速期に関節唇に大きな力がかかるようです。 肩関節の外旋可動域が大きくなる要因は、上腕骨の肩関節に近い部分にねじれが起き、骨が変形するそうです。これは少年野球の投手でもすでに起きているそうです。ピッチングする方の腕と、ピッチングしない方の腕とでは肩関節の外旋可動域に違いが見られるそうです。それほど無理な力がピッチングの際にはかかるということです。ピッチングフォームによっても、肩関節の可動域に大きな違いが出るともいえます。 肩関節周りの可動域は肩関節(肩甲骨と上腕骨との関節)だけでなく、肩甲骨自体の可動域の大きさ、脊椎のしなりによっても変わるので、全体的にバランスのとれた可動域の広さを大きくすることが大事です。

すでにinverted(逆L、逆W、等)なテイクバックをしている方でも、工夫すれば最小限の対策で怪我をしにくい投球フォームに変える方法がないわけではありません。すでに引退した選手で、inverted(逆L、逆W、等)なテイクバックをしていながら、250勝、300勝以上の勝ち星を上げた投手の特徴を調べれば、対策のヒントは得られます。

 

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