甲子園の元祖怪物と言われた、作新学院出身で元巨人軍の江川卓投手と、大リーグで300勝を達成して、投手としては大リーグ最高得票率98.84%で殿堂入りしたトム・シーバー投手との共通点
江川投手は大学2年のときに、肩の骨に疲労骨折を負い、それからはフォームが変わってしまったそうです。ここで、トム・シーバーと比較するのは、江川投手の高校時代の甲子園での投球フォームです。
江川投手は、高校時代にバッテリーを組んでいた小倉(現在は亀岡)捕手の話では、高校2年当時が一番、球が速かったそうです。 その亀岡さんによると、「江川の球が最も速かった」のは1972年11月、千葉県銚子市で行われた秋の関東大会です。準決勝の相手は地元の銚子商で、20奪三振、被安打1の完封でした。打者がファウルしただけで拍手が起こったそうです。決勝の相手は横浜商業で、16三振の完封勝利でした。
翌春の甲子園選抜大会で、江川投手は準決勝で広島商に敗れましたが、4試合で奪三振60、怪物ブームという社会現象を巻き起こしました。
江川 卓
身長183センチ、体重90キロ
右投、右打
記録
巨人軍、通算9年
135勝72敗、防御率3.02、奪三振1366
奪三振率6.62/9回、四球率2.15/9回
- MVP1回
- 最優秀投手2回
- オールスターゲームMVP1回(8連続奪三振達成)
トム・シーバーTom Seaver
身長185センチ、体重88キロ
右投、右打
記録
大リーグ通算20年
311勝205敗、防御率2.86、奪三振3640
奪三振率6.8/9回、四球率2.6/9回
サイ・ヤング賞3回
- ノーヒッター 1回:1978年6月16日
- 10人連続奪三振:1970年4月22日
- 9年連続200奪三振:1968年 – 1976年
- アメリカ野球殿堂入り得票率98.84%(第2位)、弟1位はケン・グリフィー・ジュニアの99.3%(2016年)
江川 卓(左)とトム・シーバー(右)
軸足(右側)側の膝関節をあまり曲げないで、ホームプレート方向に、重力の位置エネルギーを利用して重心を移動させています。そして、右膝が地面に着きそうになります。重力の位置エネルギーを最大限利用しています。
両者の共通点
- コントロールが良く、奪三振能力も高い。
- 両者に共通で他の投手に見られない特徴的な点は、軸足側の膝が地面に着きそう(トム・シーバーは着いているように見えます)な点です。
- ワインドアップで両手を頭の上に抱えています。
- グラブ側の脚(リード側)は、体の重心をホームプレート方向に移動させながら、高く上げ(ハイレグ・キックの部類)、すぐに地面に落下させてから、ホームプレート方向に踏み出しています。
- 前足を着地してからグラブをすばやく腋に抱え込む動作が見られます。アロルディス・チャップマンと同じ動作で、上半身の慣性モーメント(回転のしにくさの指標で、質量×回転半径)を小さくして投球側の肩の横回転を速くする効果があります。
両者の相違点
- 江川投手の右足は地面を引きずられ、上体の軸が比較的立ち気味で、投球側の肩の横回転を速くするのに有利な投げ方です。上半身は一塁方向の方にまで回転しています。
- トム・シーバーの場合は、軸足(右足)をあまり引きずっておらず、地面にほとんど着いた右膝がすばやく伸展してまっすぐになり、右肩と右足を結んだ線が一直線に伸び、右肩をホームプレート方向に加速させています。この動きは肩の縦回転、横回転いずれをも速くする動作で、投球の3つの基本的な動作である①縦回転、②横回転、③軸方向の伸展のうちの③に相当します。
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