2011年、サイヤング賞、MVP同時受賞したデトロイト・タイガースのジャスティン・バーランダーの投球フォームの分析
バーランダーは野球殿堂入り確実な凄い投手ですが、投球フォーム上どこが優れているのか探りたいと思います。
2011年の成績は24勝5敗、防御率2.40、サイヤング賞受賞
2012年の成績は17勝8敗、防御率2.64、サイヤング賞投票はタンパベイ・レイズのデイビッド・プライスに次いで2位でした。
身長6′ 5″ =約195.6 cm
体重225 lb =約102.1 kg
バーランダーの2012年度の速球フォーシームの平均球速は94.8マイル(時速153キロ、大リーグ平均は92.08マイル)、ストライク率は68.9%(大リーグ平均64.4%)でした。球の回転数は2521RPM(42回転/秒)と高い方で、上原投手とほぼ同じ。空振り率は9.9%。バーランダーの球種で最も空振り率が高いのはスライダーで20.4%、次いでチェンジアップの13.8%、カーブの10.4%と続きます。ツーシームも少し投げています。
スライダーのストライク率は69.4%と一番高く、優れています。
四球率は2.3/9回、三振率9.0/9回
2012年度のバーランダーの投球フォーム
右手のテイクバックは大リーグの中では小さいほうでしょう。上原投手に次いで小さいかもしれません。腕が打者からは見えず、ボールの出所が分りにくいフォームです。左足を胸まで上げて、下ろし始めてからボールが手から離れるまでが素早いです。以上2点は上原投手と似ています。
上原投手と違う点は左脚が1塁側に大きく傾いていて、投球後半に体が大きく1塁側に向く点です。これは大リーグで主流の投げ方の特徴です。バーランダーのこの前脚の傾きは大リーグの中でも大きいほうでしょう。この傾きによって上体の1塁方向への回転を速くし、右肩の水平方向の回転を速くして、球速を稼いでいます。
右足の蹴りによって体はホームプレート方向に向かっているのですが、左足の着地の位置がホームプレート方向よりも少し3塁側に来るので、左脚の軸が垂直よりも1塁側に大きく傾いています。
左足の着地の位置、3塁側に着地
バーランダー投球フォーム(横からの映像)
バーランダーの投球フォームで悪い点:
左足の爪先が早くから正面を向いており、左膝、続いて左股関節もホームプレートの方に早くから向いてしまっており、体の開きが早すぎです。そのため左足が着地した時には右腕もすでに大分振出されており、下半身が十分に利用できていないようです。これが改善されればもっと球速が上がりそうです。
左足が着地したときの右腕の位置、右腕がすでに振り出されている
バーランダーの投球フォームで良い点:
前脚の膝(左膝)を少し曲げて着地した後、思い切り伸ばして腰の辺り(重心)が前に行くのを完全に止め、上体が前に倒れるのを利用して、左腰を中心に右肩を前に回転させています。また、左の股関節が2塁側に押し戻されて、腰の回転を助けています。上原投手と似ていますが、上原投手の方がもっと左足の蹴りが強いのか体が浮き上がって、空中で体を回転させているように見えます。
上原投手の前足の蹴りは強い
軸足(後ろ足)の蹴り方は、平均的な出来で、蹴り出しの速度はチャップマン投手、上原投手ほど速くはなさそうです。