大リーグの平均の歩幅ストライドはどれぐらいか、最も大きい投手は?

ピッチング

 歩幅ストライドはチャップマン投手のように身長の120%と大きくなくても、ボブ・フェラーが示すように100マイルを超える球速を出せることが分りました。しかし、速い球を投げるにはストライドの大きさだけでなく、踏み出した足をいかに速く着地するかも大事な要素です。チャップマン投手は0.8秒で着地し、普通の投手よりも15%踏み出す速度が速いそうです。
 それでは、大リーグの平均の歩幅ストライドの大きさはどれぐらいなのでしょうか。
INSIDE BASEBALLの記事にその答えがありました。How Tiny Tim Became a Pitching Giantという、どうやって小さなティム・リンスカム(サンフランシスコ・ジャイアンツの投手で2年連続サイヤング賞を受賞)は投げる巨人となったのか、という記事です。
The normal stride length for a pitcher is 77% to 87% of his height. Lincecum’s stride is 129%, some 7 1/2 feet.
投手の通常のストライドの大きさは身長の77から87%です。リンスカムのストライドは129%で、約230センチです。
 ティム・リンスカムは身長180センチ、体重79キロと大リーグでは小さい方ですが、ストライドの大きさは大リーグで一番大きそうです。シンシナティ・レッズのアロルディス・チャップマン投手の120%を超えています。
 それにしても今年のリンスカムの不調が気になります。10勝15敗、防御率5.18でした。ポストシーズンではリリーフ投手として活躍し、ワールドシリーズ制覇に貢献はしましたが。
 不調の原因がどこにあるのか非常に気になります。投球フォームに変化があったのでしょうか。球速が年々低下しているのが気になります。また四球が今年増えたのも気がかりです。
 元々制球はあまり良くないようで、これはストライドが大きすぎるのではないかと思ってしまいます。チャップマン投手も制球はあまり良くはありませんが、これもストライドの大きさが関係しているのではないかと思っています。ただし、チャップマン投手は昔に比べて制球は著しく良くなっています。今年の四球率/9回は2.9と非常に良くなっています。
 ティム・リンスカム投手の成績の変化を年を追って見てみましょう。
 
 球速の変化、年々低下している
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 防御率の変化(青線は大リーグ平均値)
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 三振率/9回の変化(青線は大リーグ平均値)
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 四球率/9回の変化(青線は大リーグ平均値)
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 リンスカム投手の制球は四球率/9回が3を切ったのは2009年の一度だけというところを見ると、やはりストライドは大き過ぎのような気がしてなりません。
 
 リンスカム投手の腕の角度は垂直に近く、水平から80度近くあり、大リーグでも特殊な投球フォームで、今大リーグで主流の肩の水平方向の回転を主体とした投球フォームとは違って、肩の縦方向の回転を主体とした投げ方です。ある意味、オーソドックスな投球フォームの特殊な形とも言えます。
2009年の投球フォーム、球速96マイル
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2012年の投球フォーム、球速90マイル
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 2009年と2012年の投球フォームを比較しても、一見あまり大きな違いはないように見えます。しかし、よく見ると2012年のフォームでは、2009年に比べて、左足を上げたとき、背中をより打者の方に向け、上体を捻るようになったようです。強いて言えば、肩を上から下に振り下ろす感じから、肩を水平に1塁側に回転させる、今大リーグで主流のフォームに若干近くなったような気がします。また、2012年のフォームでは前側の足の着地が、2009年に比べて少し3塁側になったようです。
 2012年のフォーム、以前に比べ上体の捻りが大きくなったようです
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 リンスカムの腕の角度は、垂直に近く、腕を振り下ろす(肩を縦に回転させる)のに適しています
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 腕の角度が垂直に近いので、右肩をを上から下に振り下ろす2009年のフォームの方が、右肩の水平方向の回転が大きくなった2012年のフォームよりも球速が上がるような気がします。腕の角度を少し水平に近くした方が現在のフォームでは球速が上がる気がします。
 肩を垂直に回転させる時は、Vが大きいほど球速は上がり、肩を水平方向に回転させる時はHが大きいほど球速は上がります。2012年のフォームでは肩の水平方向の回転が大きくなったので、Hが大きい方が、つまり腕をもう少し下げて、大リーグの主流のフォームに近づけた方が球速が上がるということです。
チャップマン投手の腕の角度
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リンスカムの球速が低下した理由②
 ボブ・フェラーが教えているように、前足を着地するまで、投げる方の腕はまだ振り出してはいけないのですが、2009年と2012年を比較してみましょう。
2009年、前足が着地したときの投げる腕の位置
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2012年、前足が着地したときの投げる腕の位置
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 2012年のフォームでは前足が着地したときにもうすでに右腕が振り出されています。下半身を使う前に腕が振り出されてしまうと、球速は出ないし、制球も悪くなります。ストライドが大き過ぎると、我慢しきれずこのような結果になりやすいようです。体が開くのが早くなってしまうのです。つまり、左肩が早くホームプレート方向に向くので、必然的に右肩も早く振り出されてしまうのです。
 リンスカムの体が早く開いてしまう要因
①左腕をホームプレート方向に伸ばすので、体が開きやすくなっています。もっと3塁側に腕を伸ばした方が体は開きにくくなります。
②左足の爪先が早くからホームプレート方向を向いてしまっています。左足の外側の側面をホームプレート方向に着地寸前まで向けていれば体が開きにくくなると言われています。
Pitchers Stride
投手のストライド
By Steven Ellis former Chicago Cub pitching pro
前シカゴ・カブス・ピッチングプロ、スティーブン・エリス
After your knee is lifted to your chest, you will start to stride forward. The proper technique to do it (for a right-handed pitcher) is with the side of your front foot facing the target and his toe pointing at 3rd base. This enables will enable you to keep your hhips closed throughout the “expansion” of the lower body off the mound and to the target. A lefthander should stride with his tow pointing at 1st base.
膝を胸まで持ち上げた後、前へ足を踏み出し始めます。これを的確に行なう技術(右投手の場合)は前足の側面を標的に向け、爪先が3塁ベースを指すようにして行ないます。これによって、マウンドを離れた下半身が標的に向けて移動する間中、股関節を閉じたままに保つことが可能になります。左投手は爪先が1塁ベースを指すようにして足を踏み出します。
Notice in the following pictures how each pitcher is striding toward the plate leading the way with the side of his front foot — NOT his toe, which opens the hips too early.
次の写真で各投手が、爪先ではなく(これだと余りにも早く股関節が開いてしまいます)前足の側面で動作を先導して、ホームプレートに向けて足を踏み出していることに注目してください。
フィリーズのロイ・ハラデイ:2012年シーズンを終了して、199勝100敗で、.666と高い勝率を誇っている。サイヤング賞2回受賞(2003年、2010年)、完全試合1回、ノーヒット・ノーラン1回達成
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左投手の良い手本、ランディ・ジョンソン:最多奪三振9回、通算303勝、サイヤング賞5回受賞
爪先が1塁ベースを指すようにして足を踏み出しています
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In general, your stride length should be at least 80 to 90 percent of your height. (It’ll be shorter off of flat ground.) Some pitchers may find it beneficial to stride longer, up to 100% of their height.
一般的に、ストライドの長さは最小でも身長の80から90%にするべきです(平らなグラウンドから投げる場合はもっと短くなります)。もっとストライドを長くした方(身長の100%まで)が良い結果が出ることがわかる人もいるかもしれません。
2012年完全試合を達成したときのマット・ケインの投球フォーム、体を開かず投げています
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リンスカムの球速が低下した理由③
 2009年には左手のグラブを抱え込んでいたのに、2012年のフォームでは下に伸ばしています。ストライドが大きく、両足が同時に地面に着いていない場合には、左腕が伸びていると左脚を軸に上体が一塁側に回転して行く速度は低下してしまいます。両足が同時に地面に着いている場合、例えば上原投手の投球フォームでは左腕を振り下ろすことで回転力を得ています。黒田投手も同様です。ダルビッシュ投手も左腕を下げていますが、ダルビッシュ投手の場合はストライドが大きいので、左腕は抱え込んだ方が球速は上がると思います。大リーグでは圧倒的にグラブを持つ腕を抱え込んだままにする投手が多いです。
 
 チャップマン投手はグラブを抱え込んだままです
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リンスカムの横から見た投球フォーム 

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