投球フォームと腕の痛みとの関係

 内野手と外野手が投手に転向したとしたら、どちらが良い投手になれるでしょうか。
 どちらが怪我をしにくい投手になれるでしょうかと言い換えた方がこれからの話のテーマに合っているかもしれません。
 昔の大リーグの投手、例えばボブ・フェラー、ハイキック投法で有名なフアン・マリシャル等は、肘をあまり曲げず腕を伸ばして外野手のような投げ方をしていました。そのためか怪我もしなかったようです。
 内野手のような投げ方というのは、肘を大きく曲げ、肘を背中側にまで大きく引き、肩、肘の回りの筋肉を最大限、利用した投げ方と言えます。内野手はボールを捕球してから如何に短い時間で一塁までボールを投げなければいけません。いくら球が速くても、投球モーションが大きければ、一塁まで到達する時間が大きくなってしまいます。投球モーションが小さくても送球の速度が小さすぎれば同様に時間がかかってしまいます。それで一番時間のかからないフォームに落ち着くのですが、やはり外野手の比べれば肘は曲げ、肘は背中側に大きく引くフォームになります。
 大リーグの投手で言うと、ワシントン・ナショナルズのステファン・ストラスバーグ投手は内野手のような投球フォームだと言えます。そのためか、肘を故障して、トミー・ジョン手術を受けています。
 一方、外野手のホームへの送球時のフォームを見ると、イチロー選手のレーザービームのように体全体を使い、肘はあまり曲げずに腕を伸ばして投げています。軸足に体重をかけ、上体は最初、後に後傾しており、昔の大リーグの投手と似たようなフォームをしています。イチロー選手のレーザービームはアロルディス・チャップマン投手の投球フォームに似ていると昔、書いたことがあります。
 投手は速い球を投げ、かつ投球数が多いので、内野手のような投球フォームでは故障しやすいと言えます。したがって、投手は下半身を大きく使う外野手のような投球フォームの方が怪我をしにくいのではないでしょうか。
 以前から、肩、肘を使わないで下半身で投げた方が球速、怪我、制球すべてにおいて優れていると思っていたのですが、投球メカニクスと腕の痛みとの関係という記事(内野手型と外野手型の投球フォームではどちらが怪我が少ないかという内容)を見かけましたので原文(英語)を翻訳して紹介します。
 この記事ではある本を紹介しているのですが、その本では腕をムチのように使うことの問題点を指摘しています。これはストラスバーグ投手の肘の故障で最近、大きな論争となっている投球時のフォームinverted W(逆W)は肩、肘の故障につながることを指摘していると言ってもよいでしょう。inverted W(逆W)はテイクバック時に両腕を広げたときの形が英語の文字のWを上下逆さにひっくり返した形になっていることで、両肘が両肩を結ぶ線よりも高くなり、両肘が背中側に大きく引かれた形です。この形をとると、投球側の肘がムチのような使い方になり、肩、肘に大きなストレスがかかってしまいます。
The Relationship Between Arm Pain and Pitching Mechanics
投球メカニクスと腕の痛みとの関係
There is no question that throwing an excessive number of pitches beyond one’s comfort zone can lead to problems.
快適な範囲を超えて投球数が増えすぎてしまうと問題が生じることに疑いはありません。
Even more impressive is the relationship between the way one throws and the chances of developing shoulder and/or elbow injuries.
さらにもっと印象的なことは投げ方と、肩と肘の両方、あるいはいずれかひとつとの関係です。
This relationship became clear to author Robert Shaw. Shaw observed throwing mechanics of different positions and defined the classic outfielder’s pattern and the classic infielder’s pattern. He noted that among pitchers who had long careers in Major League Baseball, all threw with a similar fluid motion of the classic outfielder’s pattern.
この関係は著者のロバート・ショーによって明らかにされました。ショーはいろいろなポジションの選手の投球メカニクスを観察して、古典的な外野手型、古典的な内野手型を定義しました。彼は大リーグで長い経歴のある選手はみんな、似通った古典的な外野手型の、流れるようなモーションで投球していることに気づきました。
The classic outfielder’s pattern maximizes speed and distance in a seemingly effortless long arm delivery with the ball delivered high above the head and the elbow extended and traveling in a “downward plane” in reference to the ground. Pitchers with this delivery mechanism developed good speed on the ball because of the long lever arm. They were also accurate because, with an arc that was vertical to the ground, they did not miss inside-outside and their curve balls were more effective because they dropped. Throwing was smooth with little torque evident on the shoulder or elbow.
古典的な外野手型は、見るからに力んでおらず腕を長く使った投げ方をしていて、スピードと距離を最大限度まで高めています。ボールは頭よりも高いところで投げ、肘は伸ばし、地面に対して下向きな面を腕が移動しています。この投球メカニズム(投球動作の連動)を持つ投手は長い梃子(テコ)のような腕があるので、ボールのスピードをうまく引き出せました。彼らは制球も良かったのです。腕の振りが地面に垂直な円弧を描いているので、内角外角を外すことがなく、カーブボールも良く落ちたので有効でした。投球はスムース(流れるよう)で肩や肘には明らかにトルク(回転力、力のモーメント)はほとんどかかっていませんでした。
The classic infielder’s throwing pattern maximizes the quick release of the ball and improves accuracy. It involves a “short arm delivery” where the elbow is flexed and the arm is abducted to 90 degrees. During the acceleration phase, the shoulders “open up” creating a “whiplash” effect in order to generate speed. The potential for injury in this pattern occurs when the scapula (shoulder blade) can go back no farther and the soft tissues of the scapula, elbow, and shoulder are whipped forward under a great deal of stress.
古典的な内野手型はボールをクイックで(素早く)手から離し制球を向上させています。この型は肘が曲がり、腕が90度外転し、短い腕の使い方をしています。加速期には両肩は開き(上体がホームプレートを向く)、スピードを出すために鞭紐(ムチひも)の効果を作り出しています。
Shaw observed a jerking movement that was inconsistent and could not generate great speed without supreme efforta?”the “whiplash” puts maximum stress on the elbow and the shoulder.
ショーは瞬発的で突然動かすような動作に気づきました。この動作には、持続性がなく(長く続かない)、肩や肘に最大限度にまでストレスを加えて、鞭紐(ムチひも)の効果を極限まで使う努力をしなければ、大きなスピードを生み出せませんでした。
These throwing patterns make it clear that the mechanism of delivery is important. In fact, the incidence of arm and shoulder pain in pitchers with the short arm, infielder pattern was nearly 70 percent while those with the smooth, outfielder pattern was associated with only 20 percent. Robert Shaw’s Book: Pitching: Basic Fundamentals, is published by Viking Press and is available through the Library of Congress. It is recommended for relevant exercises that help develop an understanding of the basics in proper throwing. It also will be of interest to serious pitchers as it discusses a successful approach to getting batters out.
これらの投球の型は投球メカニズムが重要であることを明らかにしてくれます。事実、短い腕の使い方をする内野手型の投手は、肩や肘に痛みが発生する症例の70%近くを占めていました。一方、投球動作がスムースな外野手型の投手はわずか20%を占めているだけでした。ロバート・ショーの本:「投球:基本となる基礎」はバイキングプレスから出版されており、国会図書館を通して手に入れることができます。この本には正しい投球の基本を理解したい人に最適な、練習方法も含まれています。また、打者をうまく打ち取る手順も解説してあるので、真剣に投球に取り組んでいる人には興味ある本となるでしょう。
Source: John Albright, MD
情報元:ジョン・アルブライト医師

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