トミー・ジョン・シンドロームの原因(黒田投手は何故怪我をしないのか)

MLB

 ここ数年大リーグでは肘の靭帯断裂によるトミー・ジョンTommy John手術が急増し、トミー・ジョン・シンドロームとも呼ばれています。
有望な新人投手が次々とトミー・ジョン手術を行い、その影響はついにダルビッシュ、マー君(田中投手)にまで及び衝撃を受けました。その原因はどこにあるのかこの一年間ずっと考えてきました。ようやく、その謎が解けたように思います。
怪我をしやすい投球フォーム」という昔の記事に、してはいけないテイクバックの形である、Inverted W、Inverted L、等の説明があります。
その他、関連記事をあわせて見ていただければ、理解が深まると思います。
投球フォームと腕の痛みとの関係
腕の遅れと故障(中日、吉見一起投手の投球フォーム)
究極の投球フォームについて考える
私の昔の記事をいまだに多くの方が閲覧されているようなので、誤解を与えないようにこの記事を投稿することにしました。
「大リーグで主流の投球フォーム」という記事が最も読まれていますが、その主流と言う言葉の中にトミー・ジョン・シンドロームの原因が隠れているかもしれません。
昔に比べて、大リーグでは球速がアップしていますが、それに伴って肘の靭帯断裂という故障も増えています。登板過多も原因のひとつかもしれませんが、根本的な問題は投球メカニクスが怪我をしにくい昔のタイプから、大きく変わってしまったからでしょう。伝統的な昔の投球メカニクスの良い点を理解せずに、良い成績を残した投手の投球メカニクスの形だけ真似をしているのが、シンドロームの原因だと思います。
大リーグでは体幹部の横回転を重視した投球フォームが主流になっていますが、それに伴い、体を開かない、縦回転が不十分といった弊害を生んでいます。投球の際は縦回転を意識して、腕は振らないようにしないといけません。腕のテイクバックの形がよくて、肩関節がスムースにホームプレートに向けて加速(はじめに縦、次に横と曲線を描く)すれば怪我はしにくいと思います。
2013年にニューヨーク・メッツのマット・ハービーMatt Harvey、ダイアモンド・バックスのパトリック・コルビンPatrick Corbin、2014年に、現在イチロー選手が所属する、マイアミ・マーリンズのホセ・フェルナンデスJose Fernandezが靭帯断裂をしました。
マット・ハービー投手(2015年)
投球フォームは手術前と変わらず。上体を垂直にしたまま、直線的にホームプレート方向に、重心移動し、前足を着地した後、上体は急に横回転している。テイクバックはオーソドックスだが、右肩関節の軌道は水平回転し、前腕が水平に倒れるまでに肘の靭帯に無理な力がかかっているようです。フォーシームの平均球速が95マイルもあるので予想以上に無理な力が靭帯にかかるようです。
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ロイヤルズ、ティム・コリンズ投手(身長は165センチ位だそうです)
投球フォームがInverted Wに近い
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ダルビッシュ、マー君に関しては投球側の腕の形がL字になっていて、大丈夫か以前から気になっていた部分です。フォーム的にはマー君の方が肘の位置が高く、怪我に繋がりやすいフォームだという印象を持っていました。恐れていたことが現実になってしまい残念です。
結局、日本人大リーガー先発投手で怪我とは無縁だったのは現在、広島カープで活躍している黒田投手だけです。黒田投手の投球メカニクス(投球フォームという言葉は誤解を生みやすい:動作の結果、形ができるので)が問題を解決するヒントになります。
先日、ジェイソン・バルガスJason Vargasという左腕投手(現在ロイヤルズ所属、以前マリナーズ、エンゼルスにもいた)が肘の靭帯断裂したというニュースを目にしました。彼は現在32歳で、速球派ではありません。良いチェンジアップを投げる投手なので記憶していました。速球の球速が平均86マイルですから、技巧派投手なのですが、それでも怪我をするのかと驚いてしまいました。
ロイヤルズの投手では、大リーグでも最も小さい投手らしい左腕ティム・コリンズTim Collinsも2015年3月に肘の靭帯断裂をしたそうです。
ヤンキース、田中投手が肘の靭帯を部分断裂した要因

右肘の位置が高すぎる
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ヤンキース、田中投手の投球動作
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肘(ピンク色)の位置が上がって来ない、肘が水平に回転(水色は手首)
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 テイクバックのときの右肘の位置が高すぎることが、アメリカでも指摘されています。本人にもそのことは指摘されたということですが、今のところ投球フォームに変化は見られません。
大リーグでは、この数年、肘の靭帯断裂でトミー・ジョン手術を受ける投手が急増していますが、そのうちの半数の投手で、投球側の肘の位置が高いことが指摘されています。藤川球児投手もそうでした。過去に何度か記事にしましたが、Inverted Wがその代表で、日本の投手にも広がっていてまさしくシンドローム(症候群)です。Inverted Lタイプも日本で多く見られます。
テイクバックの時、肘の高さが両肩を結んだ線よりも高くなくても、ダルビッシュ投手のように肘がL字のように曲がっている場合にも、肘には大きな負荷がかかるようです。肘の構造上、ソフトボールのような投げ方以外は、投球時にどうしても小指側(ホームプレート側)の肘の靭帯が伸ばされてしまいます。
下の図は、肘の尺骨側(小指側)の靭帯UCLが引き伸ばされる様子です。

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レンジャーズ、ダルビッシュ投手
前足を着地した際、まだ投球側の前腕が垂直になっていない。

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 楽天の釜田投手は肘の手術から復帰したようですが、その投球フォームは田中投手と非常に似ていて、田中投手は大丈夫かと当時思ったものです。釜田投手の甲子園大会での投球フォームを見ると、すでに現在のフォームと同じでした。また、田中投手の甲子園での投球フォームを見直すと、現在と大きくは違っていません。投球側の肘の位置がすでに高かったのです。
「訂正」動画が間違っていました。
釜田投手の動画がオリックス金子投手の動画になっていました。
楽天、釜田投手2012年

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オリックス、金子千尋投手
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 ダルビッシュ投手の怪我のほうがどちらかと言えば驚きです。ダルビッシュ投手のほうが肘の位置が低いからです。日本ハムの大谷投手、斉藤投手、新人の有原 航平投手の投球フォームは全て、よく似ていてダルビッシュ投手のコピーのようであり、将来が不安です。
日本ハムの投手陣の投球フォームはダルビッシュ投手に似ています。大リーグで中4日では、とても投げれそうにありません。中6日は必要でしょう。
大谷翔平投手(2015年4月)
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有原航平投手(2015年)
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斎藤佑樹投手(2014年)
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黒田投手のように、昔から行われているように肘が円を描くようなテイクバックでは肘にも、肩にも負荷がかかりにくく故障が少ないということが言えます。
黒田投手の投球動作

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 元広島カープの北別府学投手(通算213勝、141敗、勝率.602、沢村賞2回)は球速は最速で144キロ程度で、速球投手ではありませんでしたが、「精密機械}と言われるほど制球の良い投手でした。投球フォームも非常に美しく、肩に無駄な力がまったくかかっていません。肘にも無駄な力がかかっているように見えません。黒田投手も40歳まで怪我をしたというのを聞いたことがないので、北別府投手のように無駄な力が肩、肘にかかっていないことを証明したと言えます。日本の投手(アマ、プロを問わず)も参考にしてほしいと思います。
元広島カープ、北別府学投手

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元広島カープ、炎のストッパー、速球投手、津田恒美
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 日本の速球派の投手は一体どの投手を手本にしているのだろうか?
ノーラン・ライアンを手本にしたのだろうかとまず思ってしまいます。日本人投手で、重心を極端に落とす人が多いのはトム・シーバーの影響が大きいのでしょうか。ノーラン・ライアンの投球フォームで頭に浮かぶのは、ヤクルトのライアン・小川投手のように足を高く上げ、右肘を完全に伸ばさずに曲げて投げるフォームです。ただし、小川投手の投球メカニクスは、足を高く上げる最初の部分を除き、まったく違う投球メカニクスです。
小川投手が真似しているのは、ノーラン・ライアンがテキサス・レンジャーズに移籍してからの投球フォームであり、デビュー当時(ニューヨーク・メッツ)は極端に足を高くは上げていませんでした。右腕のテイクバックも黒田投手のようにオーソドックスな形でした。しかし、上体を急激に水平になるまで倒していたためか、コントロールは悪く、また肘の靭帯を断裂したそうです。その後、ノーラン・ライアンは投球フォームの改造をしています。カリフォルニア・エンゼルス時代が成績が一番よく、この時の投球フォームは怪我をしにくいフォームのように思えます。テイクバックもオーソドックスです。
制球に関してはレンジャーズ時代のほうが良いかも知れませんが、怪我をしにくい投球フォームとしてはエンゼルス時代のほうが良いと思います。ノーラン・ライアンは46歳まで投げて、最後は靭帯が切れて引退しました。デビュー当時からレンジャーズ時代のような投球フォームを続けていたとしたら、40歳代まで投げられたかはよくわかりません。
ノーラン・ライアンのレンジャース時代の投球フォームを真似しないほうが良い
レンジャース時代のノーラン・ライアンの投球フォームのテイクバックの形だけ真似して、腕を振るように150キロ近くの球を投げると、肘を怪我する可能性が非常に高くなると思います。基本的にノーラン・ライアンの投げ方は、投球の後半はサイドハンドスローの投げ方であり、上体を急激にに倒すことで球速を加速させています。ノーラン・ライアンを真似するのであれば、腕を振るのを我慢して、上体を地面と水平になるぐらいまで急激に倒す必要があります。そうしないと、手投げになり怪我をする可能性は高くなるでしょう。誰もが手本にできる投球フォームではありません。しかも、投球の後半に上体を急激に倒すので、コントロールを乱す投げ方なので、よほど球速が高くなければ成功は望めないでしょう。
ノーラン・ライアン(ニューヨーク・メッツ:大リーグデビュー当時)

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ノーラン・ライアン(エンゼルス時代、1979)
一番成績が良かったときのフォーム
手本にしても問題のないフォーム

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ノーラン・ライアン(テキサス・レンジャーズ:ライアン晩年40歳台)
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訂正
ノーラン・ライアンはテイクバックで肘を完全に伸ばさず、直角に曲げ地面に垂直よりもすこし起こして、前腕が3塁側に向くような形になっています。しかし、前足を着地したときには、投球側の前腕は基本に忠実で、オーソドックスであり、地面に垂直になっています。また、この腕の形を維持したまま、腕を振るのではなく、そのまま上体を水平になるように倒すことで、結果として腕が速く動いているために、長く怪我をせずに投げてこれたのではないかと思います。
ノーラン・ライアンの投球フォームの、投球メカニクス(投球動作)を理解せず、テイクバックの形だけ真似している投手が、大リーグだけでなく、日本のプロ野球、高校野球の投手にも多いのが、トミー・ジョン・シンドロームの原因の一つかもしれません。

ノーラン・ライアンの投球フォームを超スローで見直したところ、前足を着地した時に、前腕がまだ垂直ではなく、その後、急速に前腕を垂直にしています。つまり、肩を急速に外旋させており、肩にも肘の靭帯にもストレスがかかりやすい投球メカニクスでした。日本のプロ野球、高校野球でも、Inverted W、Inverted Lタイプの投手が多く見られ、そのほとんどの投手がノーラン・ライアンと同様、前足を着地時に前腕がまだ垂直になっておらず、これを垂直に急速に起こす際に肩関節が急速に外旋し、この際、肩の急速な横回転が加わると、さらに急速に肩関節が外旋します。したがって、肩にも、肘の内側側副靭帯にもストレスがかかりやすい投げ方になっています。
日本の投手が影響を受けたと思われるノーラン・ライアンの投球フォームは、レンジャーズ時代のものであり、ノーラン・ライアンに技術指導したのが、当時レンジャーズの投手コーチであったトム・ハウス氏であり、「ピッチャーズ・バイブル」という有名な本の共著者です。
当時、タブーとされていた投手にウェイト・トレーニングを取り入れたりと野球界の異端児といわれていた、トム・ハウス氏の投球理論でノーラン・ライアンの投球メカニクスはすっかり変わってしまいました。トム・ハウス氏は速球投手にInverted Wの形の投手がよく見られるということで、この理論を思いつき出身校の南カリフォルニア大学でコーチをしていた時に、この理論にもとづき生徒に指導し、生徒は優れた成績を残すのですが、怪我ですぐに引退してしまうという事実が残っています。
どうして、実績をすでに残している大投手のノーラン・ライアンにトム・ハウス氏は指導できたのか?
テキサス・レンジャーズの当時の監督が、これまた個性的なボビー・バレンタイン(日本のロッテの監督もしていた)でトム・ハウス氏と同じ南カリフォルニア大学の出身であり、その関係でトム・ハウス氏はレンジャーズの投手コーチになれたのではないかと私は推察しています。
ちなみに、トム・ハウス氏はボビー・バレンタイン氏がロッテの監督だったときに、現在日本ハムの投手コーチである黒木氏を指導しています。黒木氏の投球フォームは、現在の日本のプロ野球の速球派投手に多いInverted Lに近いものでした。
果たして、ノーラン・ライアンの「ピッチャーズ・バイブル」で投球フォームを作り、長く怪我なく成功した投手はいるのだろうかと疑問に思ってしまいます。一時的には大成功するかもしれないが、怪我に苦しめられそうに思います。トム・ハウス氏の理論が肩(肩甲骨)から上の関節を最大限、速く動かすことにありそうだからです。ノーラン・ライアンの「ピッチャーズ・バイブル」を実際、まだ読んだことがないので、正確な判断は下せませんが、Baseball Rebellionというサイトの「THE BIRTH OF MODERN PITCHING MECHANICS: TOM HOUSE AND NOLAN RYAN」という記事には、ノーラン・ライアンの投球メカニクスの時代ごとの変化と、野球界にいかに大きな影響を与えた(投球メカニクス上の)かが詳しく書かれており、トム・ハウス氏の理論にも触れています。
以下はその内容です。
THE BIRTH OF MODERN PITCHING MECHANICS: TOM HOUSE AND NOLAN RYAN Written by Justin Orenduff on January 1, 2014 in Methodology / Mechanics, Pitching Methodology – 20 Comments
近代的ピッチング・メカニクス(投げ方)の誕生:トム・ハウスとノーラン・ライアン
If you’re a pitcher born after the year 1980, you have grown up in the era of Modern Pitching Mechanics.
もしあなたが1980年以降に生れた投手であれば、あなたはモダン・ピッチング・メカニクス(近代的な投げ方)の時代に育ったということになります。
The birth of the modern delivery dates back to the late 80′s/ early 90′s and can be attributed to the relationship between Tom House and Nolan Ryan. Therefore, a young pitcher born in the early 80′s would have been exposed to the modern delivery as he climbed the ranks of Little League Baseball and beyond. Here’s the story of how the most common pitching delivery seen in baseball today, and how it manifested into its current form.
近代的な投げ方の誕生は80年代終わりから90年代始めにさかのぼります。そしてそれはトム・ハウスとノーラン・ライアンがタッグを組んで生れたのです。したがって、80年代初めに生れた若い投手は、リトルリーグからさらにその上のレベルを目指す際に、この近代的な投げ方にさらされたことでしょう。これからお話するのは、現代の野球で最も一般的な投球方法がどんなもので、そしてそれがどうやって現在の形になって現れたかについてです。
ALL ABOARD!!
みんな乗って!
In 1968 a train called “The Ryan Express” pulled out of the station filled with 100mph fastballs, high leg kicks, no hitters, and a seemingly never ending supply of strikeouts. The Ryan Express was driven by conductor and Hall of Fame Pitcher Nolan Ryan, who set a standard for speed, power, and endurance. For years The Ryan Express made it’s way through the National League and American League overpowering hitters and logging thousands of miles on its long journey. But, as The Ryan Express grew closer to its inevitable return to the station, it’s cargo had a few new additions. The additions were manufactured and built by Texas Ranger pitching coach Tom House, who began working with Ryan in 1989.
1968年にライアン・エキスプレスという列車が、100マイルの速球、ハイレグ・キック(足を高く上げること)、ノーヒット・ノーラン、そして果てしない三振の山を積んで、駅から引き出されました。何年もの間、ライアン・エキスプレスは、長い旅路の途中で、ナショナル・リーグ、アメリカン・リーグに立ち 寄り、打者を圧倒しながら、何千マイルも進んだのでした。しかし、ライアン・エキスプレスは避けられない駅への帰還が近づいてくると、積荷にいくつか新しいものが追加されました。その追加の積荷は1989年、ライアンと一緒に働き始めたテキサス・レンジャーズのピッチング・コーチのトム・ハウスによって作られました。
According to Tom’s website tomhouse.com, he is considered by many “The Father of Modern Pitching Mechanics”. Prior to House working with Ryan, he already began to study the pitching delivery using motion video analysis. In 1986, he started his own company Bio Kinetics Inc. and was one of the first to blend scientific based pitching study into training methodologies for pitchers. At the time, many of Tom’s methods were seen as radical, but when the working relationship between House and Ryan began in 1989, the methods gradually molded into mainstream absolutes, and shortly thereafter, a shift occurred from a traditional pitching methodology into House’s scientific based methodology.
トムのウェブサイト、tomhouse.comによると、彼は多くの人に「近代投球方法の父」とみなされているそうです。トム・ハウスはライアンと一緒に働く前に、すでにモーション・ビデオ(動画)解析を使って投球の仕組みについて研究を始めていました。1986年にトム・ハウスはバイオ・カイネティクス(生体運動力学)という会社を設立し、科学に基づいた投球の研究と投手のトレーニング方法を融合させるということを行った最初の人の一人です。その当時、トム・ハウスの方法論は異端と見られていました。しかし、1989年にトム・ハウスとノーラン・ライアンの共同作業が始まると、その方法論は次第に主流の絶対的なものへと形作られ、それから瞬く間に、伝統的な投球方法からトム・ハウスの科学に基づいた投球方法へのシフト(移行)が起こりました。
With Ryan being regarded as one of the best of all time, Tom’s information reached the masses with their joint publication “Nolan Ryan’s Pitchers’s Bible”; A must read at the time for any aspiring pitcher. If you want to throw hard, just lift your leg like Nolan Ryan right? I know my little league was filled with young kids imitating Ryan’s leg kick and an effort to throw harder. But, the mechanical information produced by Tom House and backed by Nolan Ryan, solidified the embodiment of their information to new heights. Coaches, players, and parents latched hold of the information and the “Bible” made its way through the game of baseball everywhere. The “Nolan Ryan’s Pitcher’s Bible” was released in 1991, three years after House and Ryan met and started working together. Tom would continue to release publications on pitching but the commencement of Modern Pitching Mechanics had been established, and provided a platform for the next decade to shape how pitchers throw a baseball.
ライアンが大リーグ史上、最高の投手の一人であるとみなされるとともに、トム・ハウスの情報(方法論)は「ノーラン・ライアンのピッチャーズ・バイブル」という彼らの共同出版物により、多くの人々に届きました。そして、その当時、上を目指す投手の必読書となりました。もし、速い球が投げたければ、ノーラン・ライアンのように足を上げなさい? 私のリトルリーグ時代はライアンを真似て足を高く上げ、もっと速い球を投げようと努力する少年たちであふれていました。しかし、トム・ハウスにより作られ、ノーラン・ライアンに支持された、投球メカニクス(投げ方)はその具体化された内容が確固たる地位を得ました。コーチ、選手、親たちは、その内容の虜になり、「バイブル」は野球界に浸透してゆきました。「ノーラン・ライアンのピッチャーズ・バイブル」は、ハウスとライアンが出会って共同作業を始めてから3年後の、1991年に出版されました。その後、トムは投球に関する書物を数多く出版することになるのでした。しかし、近代投球メカニクスはまだ誕生したばかりで、次の10年簡にどうやって球を投げるのかを形作る下地が提供されたのでした。
As mentioned earlier, the “new additions” House brought on board can be seen clearer with a better understanding of where Ryan’s mechanics first started with the New York Mets. In order to paint a picture of how pitching mechanics changed form over the years, I will use Nolan Ryan as a case study. Ryan’s 27 year career provides glimpses of changes in information and how the information transformed his mechanical pattern. See the video below to gain a perspective on the changes Ryan made throughout his tenure with the Mets, Angels, Astros, and eventually the union of the Texas Rangers and Tom House.
最初に述べたように、ハウスが列車に積み込んだ追加の荷物は、ライアンのニューヨーク・メッツでの最初の投球メカニクスがどのようなものであったかを理解すれば、もっとはっきりと見ることができます。投球メカニクスが時とともにどのように形を変えたかを描くために、ノーラン・ライアンを例にとってみましょう。ライアンの27年間のキャリアを見ると、投球理論に変化が見られ、その結果ライアンの投球メカニクスの型がどう変化したかがわかります。下のビデオを見ると、ライアンがメッツ、エンゼルス、アストロズ、そして最後にテキサス・レンジャーズとトム・ハウスとの連合へと所属チームを変えるとともに起こった投球メカニクスの変化の全体像が得られます。
New York Mets ( 1966-1971)
If there ever could be a right handed Sandy Koufax, it began to surface with Nolan Ryan in a Mets uniform. During the early part of his career, Ryan’s delivery resembled the fluidity and looseness of the era. Many young baseball enthusiasts never realize where Nolan’s delivery truly started. In my professional opinion, Nolan’s mechanics during his career with the Mets, far exceeded his mechanical pattern throughout any other point in his career.
もし右腕のサンディ・コーファックスがいるとしたら、メッツのユニフォームを着たノーラン・ライアンがそれにあたります。ライアンのキャリアの最初の時期は、投球メカニクスがその時代の(特徴である)流れるような、力を抜いた、投球フォームに似ていました。多くの若い熱烈な野球ファンはノーラン・ライアンの投球メカニクスが最初どのような物であったかを決して実感していません。私のプロとしての意見としては、ノーランのメッツ時代の投球メカニクスは、彼の経歴のどの時点の投球メカニクスの型よりもはるかに優れています。
Characteristics
特徴
All information described below can be found in Nolan Ryan’s Pitcher’s Bible.
下に書かれている内容は全てノーラン・ライアンのピッチャーズ・バイブルで見ることができます。
The ADDITIONS (Four Absolutes)
追加の荷物(4つの絶対)
①Balance
バランス
Don’t start any forward momentum toward home plate until your leg reaches its apex. ? Tom House
脚が頂点に達するまで、ホームプレート方向に動き始めてはいけません ートム・ハウス
Maybe Nolan didn’t realize for the past 22 seasons prior to 1989, his lower body routinely moved forward throughout the entire phase of the delivery; an absolute to generating momentum. But now his mind consciously came to the top of his iconic shoulder height lift and generated a slight pause. A pause that would eventually be evident in many young pitchers. The concept of achieving balance through a slight pause was now created.
おそらくノーランは1989年以前22年間、自分の下半身が投球の全フェーズ(相あるいは過程)でいつも前に動いていることを自覚していなかった;運動量を生み出すために必須のこと。しかし、今は、象徴的な、肩の高さまで脚を上げ、わずかに停止することを意識している。停止は結果的に多くの若い投手が真似ることになりました。わずかな停止によりバランスを取る考えが今、生み出されました。
②Direction
方向
Once you achieve optimal balance, begin a controlled fall toward home plate, your front foot leading the way. Turn your thumbs under to force your elbows up into launching position. Your entire front side, glove, elbow, shoulder, hip, knee and foot should be perfectly directional and online with home plate.
一度最適なバランスが取れたら、前側の足でリード(先導)してホームプレートに向かってバランス良く落下しなさい。親指を下に向け、肘を強制的に上に向けるようにしてローンチング(投球)ポジションへと向かいなさい。体のホームプレート側全体、グローブ、肘、肩、骨盤、膝、そして足は完全にホームプレート方向に一直線上に並ぶようにしなさい。
Maintain the same upper body posture you achieve in the balance phase of the delivery.
投球のバランス相で達成する上半身の姿勢を変えずにずっと保ちなさい。
Think of the body as a gate that moves together as a single unit, no part of the gate should fly open as you advance toward home plate. If a pitcher opens up, hips rotating outward first or third base, he’ll place undue stress on the throwing arm while limiting the efficiency and power of the delivery. ? Tom House
体を一体として動く門と考えてみてください、ただし、ホームプレートに向かって進む際、門のどの部分も開いたりしてはいけません。もし、投手の体が開けば、骨盤は一塁ベース側(右投手の場合)、あるいは三塁ベース側(左投手の場合)に回転してしまい、投球側の腕には不適切な応力がかかるでしょう。しかも、投球の効率、パワー(力強さ)は制限を受けてしまいます。? トム・ハウス
③Deception/Launch
ディセプション(ごまかし)/ローンチ(腕を振る)
Your throwing and front-side elbows will both attain shoulder height at the launch phase. Let your forearms and hands form a 90-degree angle to maximize arm strength and leverage. The forearm, wrist, and glove on your front side, if they’re properly aligned, will impede the hitter’s view of your pitching arm in its launch position ? this is the deceptive element of the equation. ? Tom House
投球側の腕を振る際は、投球側およびグラブ側の肘の高さは肩の高さに保ちなさい。腕の強さとテコの作用を最大にすために、前腕と手は90度の角度となるようにしなさい。前側(ホームプレート側)の前腕、手首、グローブは、正しく並んでいれば、腕を振る位置で、打者があなたの投球側の腕を見るのを妨げるでしょう。-これが方程式のごまかしの要素です。-トム・ハウス
In this deception/launch stage of the pitching motion, you want to stay closed as long as possible. A closed delivery allows the hitter less time to see the ball. The second checkpoint in my delivery is that you cannot throw the ball until your landing foot hits the ground. – Nolan Ryan
投球モーションのこのディセプション/ローンチ段階では、できるだけ長く体を閉じていたいです。体を閉じて投げると打者はボールを見る時間がより少なくなります。私の投球方法での第2のチェックポイントは、着地側の足が地面に着地するまでボールを投げないようにすることです。-ノーラン・ライアン
④Weight Transfer
体重移動
Hips must stay directional (toward home plate) until the landing leg hits; all hip rotation takes place after this point. Land with your front side directional but your landing foot “closed off”. A right handers left big toe should point slightly toward the third base side of home plate, blocking off your forward movement. This transfers your forward momentum up through the body and into the arm at your release point, and ultimately ensures a less stressful deceleration of the arm.
骨盤は着地側の脚が着地に入るまでずっとホームプレートに向かっていなければいけません;骨盤の回転はすべてこの点(前足着地)以降に行います。体の前側(グローブ側)はホームプレートに向けますが、着地する足は閉じて行います。右投手の足の左親指は、体の前への動きをブロックするために、ホームプレートのサードベース側にわずかに向けるべきです。こうして前への運動量(体重移動の)が、リリースポイント時に体を通って腕へと伝わり、最終的に腕へのストレスを減少させるように、腕を減速させることが可能となります。
Once your throwing elbow leads the throwing arm forward, your strong side replaces the directional side as weight is transferred the landing leg. Your shoulders pass each other in opposite directions. Your head stays directly over the bent knee of your landing leg.
投球側の肘が投球側の腕を前へとリード(導く)するようになると、ストロングサイド(体の投球側)がディレクショナルサイド(体のグラブ側)と交代し、体重が着地側の脚へと伝わります。両肩は互いに反対方向に通過します。頭は着地側の脚の曲げた膝の真上にとどまります。
その理論を読む限り、ノーラン・ライアンの「ピッチャーズ・バイブル」で投球フォームを作らない方がよいというのが私の意見です。
Baseball Rebellionのこの記事もそういうニュアンスのようです。

 前足を着地して、右肩(右投手の場合)が地面に垂直な面内で縦回転していることが重要なポイントだと思います。いきなり肩が横回転するのを避けるためです。
着地時に右肩が縦回転することで、肩が上腕を引っ張るため前腕のレイバックが抑えられ、肘関節を伸ばす力が働くため、肩関節の外旋が極力避けられ、肘の内側側副靭帯にもストレスがかかりにくくなります。

 前足を着地して、右肩が地面と平行な面内で急激に横回転すると危険。
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 先に挙げた、マット・ハービーMatt Harvey、パトリック・コルビンPatrick Corbin、ジェイソン・バルガスJason Vargas、といったオーソドックスなテイクバックをしているにもかかわらず、肘の靭帯を断裂してしまう謎の原因に違いないと思います。
こうなると、投球側の前腕が2塁側に急激に倒れ、肘の尺骨側(小指側)の靭帯UCLが急激に伸ばされ、靭帯に障害が起き、最悪、完全断裂することになります。微小な障害が積み重なると、部分断裂、完全断裂へと進行して行きます。
前足を着地したときに、投球側の前腕がまだ垂直にならず、タイミングが遅れると、靭帯UCLを怪我する確立が高くなります。Inverted W,Inverted L,Inverted Vといった投球フォームをしていると、このようにタイミングが遅れます。ダルビッシュ投手もそうなっています。ダルビッシュ投手はInverted Lに近い形です。肩甲骨はあまり背中側に引いていないので、完全なInverted Lではないかもしれません。
結論
怪我をしないで、速い球を投げるポイント
①昔の投手が行っていたように、体幹部は最初から、緩やかに横回転、縦回転を行う。(回転慣性を与える)
その結果、体幹部だけでなく、投球側の腕にも運動量が与えられる。体幹部はホームプレート方向に平行移動するのではなく、いかに速く倒れるかが重要です(縦回転)。グラブ側の脚を高く上げたときに背中がキャッチャーから見えるようにする(横回転)。
②腕は振らない
腕は振らなくても、テイクバックの腕の位置がよければ、肩関節がホームプレートに向けてスムースに加速するだけで、腕は速く回転します。腕を振る意識があると、肩、肘の関節に力が入り、肘の関節が伸びようとする動作を妨げてしまうので、肩関節を急速に外旋させるトルクが働き、肩関節にも肘の内側側副靭帯にも大きなストレスがかかってしまいます。
③前足を着地してからは、投球側の肩関節が地面に垂直な平面内を縦回転することを意識する。
その後、肩関節は水平に回転しても安全です。前足の着地から少し時間が経つと、投球側の肘関節の曲がりが小さくなるからです。肩の縦回転で肩が腕を引っ張るので、前腕がレイバックするよりも先に、肘関節が伸びて行きます。

楽天、安楽投手
早くフォームを修正しなければ危険です。
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藤川球児投手(Inverted W)
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コメント

  1. しばらく より:

    たまたま開いたら、久しぶりの更新!
    とても楽しみにしていました。
    すぐに高校1年の息子に連絡しました。笑
    これからも楽しく拝見させて頂きます。

  2. たくいおぱぱ より:

    初めまして!
    2年前よりこちらのHPを参考にさせていただき 息子(中二リトルシニア)といろいろ研究してヒップファースト以外で全国大会に行こうと日々練習をさせていただいております。どちらかいうと上原選手のページを中心にフォームを作りました。現在120km/h前後のスピードが出て且つ安定したピッチングでチームのエースまでなることができました。本当にこのHPの賜物です。ありがとうございました。それで、厚かましいお願いなのですが、もしよければフォームを動画で見てはいただけないでしょうか?実はこの1か月間 肘の痛みが出てきており原因がわからないところなのです。チームの監督には肘を上げてヒップファーストにしないからではといわれており、我々もなんとかこのフォームで頑張りたいと思っております。もちろん私どもの責任の範囲で作ったフォームなので気になさらず アドバイス程度でも大変うれしいのでお願いできませんか?

  3. じんた より:

    初めまして
    仙台育英の佐藤セナ投手の投げ方がアーム式と言われ話題になりましたが、そもそもアーム式の定義がよくわかりません、解説をして欲しいです!
    あと手投げの定義や代表となる投手がよくわからないのでこれも解説してもらえればと思っています
    いつも楽しみに読んでいます頑張ってください!

  4. じんた より:

    初めまして
    仙台育英の佐藤セナ投手の投げ方がアーム式と言われ話題になりましたが、そもそもアーム式の定義がよくわかりません、解説をして欲しいです!
    あと手投げの定義や代表となる投手がよくわからないのでこれも解説してもらえればと思っています
    いつも楽しみに読んでいます頑張ってください!

  5. 旅人 より:

    桑田氏のコメントからこちらに飛んできました。
    かなり詳しく解説されていますが、野球がご専門ですか?
    それとも、バイオメカニクスのご専門で野球分野をされているのでしょうか?
    野球では、左足から右肩にかけてが軸になって投げるのが良しとされているのでしょうか?
    教えていただけると幸いです。

  6. 管理人 より:

    旅人さんへ
    質問内容:
    ①私の経歴について
    ②左足から右肩にかけてが軸になって投げるのが良しとされているのでしょうか?
     桑田真澄投手の投球の考え方は正論だと常々、彼のyou tubeの動画を見て思っておりました。桑田氏はたし
    か、昔の怪我をしにくい投手の投げ方を参考に自分の投球フォームを作ったようですね。野球界の誤った常識(ダウンスイングは間違っているとか、グラブ側の肩を上げ、投球側は下げ、たらいの水を投げるようにすると良いとか)を色々指摘されており、共感しました。
    私はまったくの趣味でこのサイトを運営している身で、ダルビッシュ投手が大リーグに移籍して、当初制球に苦しんでいるのを見て、どうしてなのかなと思ったのがサイト内で投球分析を始めたきっかけです。最初は英語の勉強のため大リーグの英語のサイトを読めるようになりたいというのがサイトを立ち上げたのがきっかけです。
     ダルビッシュ投手が順調に大リーグで活躍していれば投球分析はしていなかったかもしれません。私は選手としての野球の経験も無く、テレビで野球観戦を少しする程度のまったくの一般人で、現在は医療関係の仕事をしております。
     高校大学とも機械科でしたので工学系の人間です。2つの仕事を経験したせいで、自然にバイオメカニクス的な見方で投球のメカニクスを考えてしまいます。しかし、人間の体は機械とは違って剛体ではなく、特に体幹部は形が絶えず変化し、筋肉の緊張度も変化するので、分析がなかなか難しく、大変な労力がかかってしまい、そろそろサイトを終了したいなとつい思ってしまいますが、昔の記事をまだ見てもらっている人がいるのでそれもすぐにはできずにいます。他の趣味の時間も取られてしまうのでどうにかしたいなと思っています。
     昔書いた記事は今から見ると、まだ表現が粗雑で不適切なところもあり、中途半端なので削除したい部分、書き換えたいところもあるのですが、時間がないのでそれもできていません。投球理論というのは奥深くてなかなか終わりがありません。このサイトを参考にして投球フォームを作っている方がいるそうなので、もっと実践に役に立つサイトへと移行したいなと思っています。
     時間さえあれば、もっとちゃんとした投球理論を作れそうですが、それには仕事としてできるようにならないと無理なので、今自分でいろいろと考えている、今までにない新しい投球メカニクスを現役の投手の方に試してもらい、実際に役に立つのか知りたいと思っています。
     
     話が長くなりましたが、本題に入りたいと思います。
     今、日本でどういう指導方法が標準となっているのか知らないので、私なりの考えを述べさせていただきます。右投手を例にとって考えます。
     サイドハンドスローでは、右投手の場合、左足から右肩にかけてが軸にはならないと思います。体の重心を通る軸を回転軸にして、慣性モーメントを小さくするのが最も効率のよい方法のように思います。大リーグではウォルター・ジョンソンがそういう投げ方をしていました。最近注目しているのは、大リーグでの速球投手で歴代2位の計測記録を持っている(1位はノーラン・ライアン)ボブ・フェラーのサイドハンドスローです。試合ではサイドハンドに近いスリークウォーターですが、1940年に私服に革靴というカジュアルなスタイルで、オートバイと野球と同じ投球プレートからホームプレートまでの距離60フィート6インチを競争しました。https://youtu.be/IhZ7t_DNi9w
     オートバイは平均時速86マイルでした。ボブ・フェラーはこのオートバイに13フィート差をつけて勝ちました。ボールの減速は初速90マイルで9%で、時速が上がるほど減速率は高くなります。初速100マイルでは10%ぐらいです。計算の結果、ボブ・フェラーの初速は時速104マイルだったということです。マウンドがなく、革靴での結果なので思い切り投げていたらどういう結果になっていたのか? ボブ・フェラーは身長が6フィートちょうどで、183センチとびっくりするほどの大男ではありませんので、このサイドハンドの投げ方には注目せずにはいられません。ボブ・フェラーは大リーグの優れた選手の一人として、ウォルター・ジョンソンを選んでいるので、その投げ方を参考にしたのかもしれません。ボぶ・フェラーのスリー・クウォーターの投げ方はサイドハンドスローの軸を傾けた結果、出来上がったのかもしれません。
     右足から右肩にかけてを軸にして、重力を利用してその軸を前傾させながら、その軸も回転させるサイドハンドの投手も昔の大リーグにはいました。この投げ方はオーバーハンドでも可能な投げ方です。右足から右肩までを一直線に伸ばします。
     右投手の場合、昔の投手は、アメリカでも、日本でも、脚を少し高く上げるハイレグ投法では、ワインドアップする際、上体が2塁側に倒れ、さらに背中がホームプレートに向くようになっていたので、前脚の重心を3塁側寄りかつホームプレート側に移動し、そのまま前脚の重みで回転トルクを作りだしていました。それで、上体は緩やかに縦回転、横回転(前脚を緩やかにおろす結果による)し、その結果、投球側の肩が円軌道を描くので、右腕は肩の力を使わなくても自然とコッキングの位置まで引っ張り上げられていました(右腕を頭の上から自然落下させさらに上昇するタイミングで、前脚をおろす必要がある)。そして、前足を着地してからは上体を重力で落下させることで、投球側の肩はさらに加速し、投球側の腕もそれに引っ張られるようにして加速してゆきました。
     現在、重心移動という表現が使われているようですが(ノーラン・ライアンのピッチャーズバイブルでweight transferと表現されているので、これが日本で使われているのかもしれません)、昔の投球方法では上体が2塁側に傾いた上体かららホームプレート側に倒れながら回転して行くので、重心移動という表現は不適切だと思います。重心移動ということを意識すると、投球側の肩の位置が移動する軌跡が直線軌道に近くなるので、右腕を肩の回りの筋肉を使って引き上げなければならなくなるので、良い方法とはいえません。ストライドが大きいと肩の軌道はまったくの直線軌道となるので肩、肘の故障が多くなる危険性があると思います。
     このように昔の投法では、自然と左足から右肩にかけて軸(必ずしも直線ではない)ができ、別の表現をすれば、左脚から落下してその重力と慣性で体幹部が引っ張られ、さらに肩が引っ張られ、最後に右腕が引っ張られるので、腕を強く振る必要はなかったのです。左足から右肩までを弾力性のある釣竿のように使っていたと言えます。横回転を大きくした場合、例えば右の股関節の外旋、左の股関節の外旋(両者は作用、反作用の関係で連動している)を大きくした場合(アロルディス・チャップマンのように)は、左足から右肩にかけての軸自体が回転し、右肩の位置の軌道の横回転が大きくなるので、腕の角度は水平に近くなります。こういう昔の投げ方のほうが怪我をしにくい良い投げ方だと思います。
     後は、この昔の投げ方をいかに自分なりにアレンジして自分独自の投げ方を生み出すかが大事だと思います。 

  7. まっつー より:

    いつも拝見させていただいております レッドソックスの田沢選手のフォームは自分の中で結構理にかなってると思うのですができれば今度サイトで分析してもらいたいです 

  8. まっつー より:

    いつも拝見させていただいております レッドソックスの田沢選手のフォームは自分の中で結構理にかなってると思うのですができれば今度サイトで分析してもらいたいです 

  9. まっつー より:

    いつも拝見させていただいております レッドソックスの田沢選手のフォームは自分の中で結構理にかなってると思うのですができれば今度サイトで分析してもらいたいです 

  10. うち より:

    いつもとても面白い記事を楽しませてもらってます。
    お聞きしたい事があるのですが、西武ライオンズ高橋朋巳選手のフォームはとても独特なフォームをしているように見えます。彼のフォームには故障などのリスクはやはりあるのでしょうか?あるのならどこを改善すればそのリスクはなくなるのでしょうか?
    是非教えていただければ幸いです。

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