2012年度、大リーグで信じられないような活躍をした選手と言えば、37歳にしてナショナルリーグでサイ・ヤング賞を受賞したナックル・ボーラーのR.A.ディッキーの名前がすぐにあがります。
しかし、タンパベイ・レイズの35歳のクローザーであるフェルナンド・ロドニーの方がもっと驚くような活躍だったかもしれまん。
ロドニーの突然の大活躍は2012年度の大リーグの投手の中で最大の謎です。
アリーグ最多の48セーブを挙げ、防御率は驚きの0.60でクローザーの大リーグ記録を更新したのです。これまでの記録はデニス・エッカーズリーの0.61でした。
驚くのはこれだけではありません。ロドニーは2012年度が大リーグで10年目のシーズンだったのですが、それまでは防御率は4点台で、球速は以前から最速100マイルを投げていたのですが、制球が悪く四球率/9回は最も良いシーズンで3.5、2011年度は7.9でした。通算では4.4です。
ところが、2012年度は四球率/9回が1.8と信じられないような数字にまで下がりました。
三振奪取率/9回は2011年度の7.3から2012年度は9.2と向上しました。通算では8.4です。
ロドニーは2012年度の活躍で最優秀救援投手賞とカムバック賞を受賞しています。
何がロドニーを変えたのか、その秘密を探ってみましょう。
2011年度までと大きく変わった点が3つあります。
①投球フォームで、前足をほとんど上げなくなった
ロドニー2010年5月19日、96マイル、ツーシーム
ロドニー2012年、98マイル、フォーシーム
ロドニー2012年、82マイル、チェンジアップ①
ロドニー2012年、85マイル、チェンジアップ②
②球種の配分が変わった。
3つの球種をほぼ均等の比率で投げるようになった。
3つの球種はツーシーム、チェンジアップ、フォーシームです。以前は比率の低かったツーシームを多く投げるようになり、その結果、ゴロが多くなり、被本塁打率も非常に低くなりました。
2012年度の球種の配分は、チェンジアップ36.5%、フォーシーム31.4%、ツーシーム30.8%でした。
また、チェンジアップの空振り率が2012年度は25.7%と上昇しました。2011年度は15.3%でした。
年毎の球種の配分、FF:フォーシーム、FT:ツーシーム、CH:チェンジアップ、SL:スライダー
③マウンド上で立つ位置が、マウンドのプレートの最も一塁側になった。
ロドニー、2012年度のマウンド上の位置
その結果、ボールのリリースポイントが一塁側になり、打者に投げ込むボールの角度が変わった。これも打者にとっては打ちにくくなっているのでしょう。
ロドニー、2011年度のリリースポイント
FF:フォーシーム、FT:ツーシーム、CH:チェンジアップ、SL:スライダー
ロドニー、2012年度のリリースポイント
FF:フォーシーム、FT:ツーシーム、CH:チェンジアップ、SL:スライダー
ロドニーの制球が良くなって四球率が減少した理由としては、①の前足を上げなくなったことと、ツーシームを多く投げるようになり、ゴロを打たせてアウトを取るようになったことが考えられます。
ロドニーは2011年度は初球にフォーシームを最も多く投げました(約5割)が、2012年度はフォーシームよりも球が沈み、右打者の手元に食い込む変化をするツーシームを初球に最も多く投げました(約4割)。
2011年度の初球の入り方、フォーシーム53.8%
FF:フォーシーム、FT:ツーシーム、CH:チェンジアップ、SL:スライダー
type 球種
count 球数
selection 球種選択比率
strike ストライク率
swing スウィング率
whiff 空振り率
foul ファウル率
in play インプレイ率(空振り、ホームランを除き、ボールがダイアモンド内に飛んでプレイ継続中となる率)
2012年度の初球の入り方、ツーシーム40.8%
FF:フォーシーム、FT:ツーシーム、CH:チェンジアップ、SL:スライダー