ダルビッシュ投手は2012年に大リーグにデビューしてずっとコントロールに苦しんでいました。そしてシーズン後半になって調子を落としました。勝てなくなって防御率も一時は4点台に悪化しました。
7月は1勝3敗、防御率5.74、8月は2勝2敗、防御率5.29でした。
しかし、9月になって別人のような活躍をしました。
9月は3勝0敗、防御率2.21、被打率は.160、WHIP(1イニングあたりに四球、あるいは安打で何人塁に出したか)0.74でした。
この大躍進の要因は2つ考えられます。
①投球の球種の配分が大きく変わった。
レンジャーズには二人の捕手がいました。マイク・ナポリとヨービット・トレアルバです。マイク・ナポリ捕手とは余り相性が良くなかったので、ダルビッシュ投手とは主にトレアルバ捕手がバッテリーを組んでいました。
しかし、レンジャーズは7月30日にシカゴ・カブスからジョバンシー・ソト捕手を獲得して、ヨービット・トレアルバを放出したのです。ダルビッシュ投手はこれ以後ソト捕手とバッテリーを組むようになりました。そして球種の配分がガラリと変わりました。
7月、8月、9月の投球の球種の配分
FT ツーシーム
FF フォーシーム
SL スライダー
FC カットボール
CU カーブ
FS スプリッター(スプリット・フィンガー・ファーストボール)
CH チェンジアップ
Type 球種
Count 珠数
Selection 配分比率
Strike ストライク率
Swing スウィング率
Whiff 空振り率
7月
8月
9月
9月の対左打者
9月の対右打者
最も多く使う球種が7月はツーシーム、8月はフォーシーム、9月はカットボールと変化しました。
9月になって速球を主体に投げるようになりました。9月はカットボールが39.7%、フォーシームが28.3%とこの2種類の速球の合計だけで68%になりました。そして、ツーシームは7.9%と余り使わなくなりました。
9月になってコントロールが大変良くなっています。また空振り率も各球種で良くなっています。
ダルビッシュ投手はずっと左打者に苦しんできました。2012年の左打者に対する防御率は4.23、被打率は.231でした。一方、右打者に対する防御率は3.49、被打率は.207でした。
ところが、9月になって左打者に対するコントロールが良くなりました。多くの球種で70%を超えており、右打者の場合よりも良くなりました。
また、9月には、左打者に対してカーブを効果的に使いました。空振り率は28.1%と有効でした。
②ダルビッシュ投手の投球フォームが変わった
ダルビッシュ投手はセットポジションから投球していますが、その際前屈みで構えるようになりました。
ダルビッシュ投手の投球フォームの変化を見てみましょう。
2006年アジアシリーズ決勝戦
2012年4月9日、大リーグデビュー戦(対マリナーズ)、イチローに3安打目を許す
2012年9月ロイヤルズ戦、あわやノーヒット・ノーランの試合、2回に球速97マイルを出す
構えをを前屈みにしたのは投手コーチであるマイク・マダックスの弟で、精密機械といわれ通算355勝を挙げたグレッグ・マダックスでした。マダックスのフォームとよく似ています。
前屈みにした理由は、最初から軸足である右足の爪先側に十分に荷重するためでした。そうすることで、力強く蹴りだせるのと、早いタイミングで蹴りだすことが出来るからだと思います。
通算868号の世界のホームラン王、王選手の1本足打法の軸足を見ればその理由がよく分ります。バッティングもピッチングも軸足をいかに早いタイミングで強く蹴るかによって、打球を遠くまで飛ばせるか、速い球を投げれるかが決まるからです。王選手の軸足(左足)に注目すると、爪先側に荷重して構え、踵を上げながら素早く足の向きを前に向け蹴っているのが分ります。左足の向きは最初から少し投手側に向いているのも素早い蹴りだしを可能にしているのだと思います。これは上原投手にも見られます。
世界のホームラン王、王選手の打撃フォーム