日本人が大リーグで成功するために起きる投球フォームの変化

ピッチング

 
 日本人投手は大リーグに移籍してからみんな投球フォームが変化しています。投球と言うと、肩から先に意識がいきますが、大事なのは下半身、特に脚(足、膝)です。肩から先は強度的に弱く故障しやすいので、下半身で球速を作り出すのが大事なようです。
 その第一歩が軸足です。軸足の早いタイミングでの強い蹴りが非常に大事です。
 
 上原投手
 上原投手は大リーグに移籍してから投球フォームが大きく進化しました。そのおかげで防御率も毎年向上しており、2012年度は1.75でした。
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 上原投手の直球フォーシームの平均球速は89マイル(時速143キロ)で大リーグの平均球速92マイルに比べて、速くはないのに三振を多く奪っています。2012年度の三振奪取率は10.75/9回でした。
上原投手の投球は、球は速くなくてもタイミングが取りづらいと打者は空振りしてしまうという見本です。
 直球(フォーシーム)で空振りが取れる要因
①ボールの回転数が高い
 上原投手のフォーシームは回転数が2500rpm(42回/秒)と高く、垂直方向の変化は11.67インチ(29センチ)と大リーグの平均8.75インチ(22センチ)に比べて大きく、平均的な投手に比べてボール1個分ほどホップする感じです。これも三振が取れる要因です。
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②投球時のテイクバックが小さく、腕が体の陰に隠れて見えないので、ボールの出所がわかりにくい。
 元巨人の江川卓投手もテイクバックが小さく、クイックモーションだったので140キロ代の速球で三振が多く取れていたのだと思います。

 
③投球モーションでボールをテイクバックしてからボールが手から離れるまでの時間が短い。
 ボールをテイクバックしてからリリースするまでに要する時間は、1コマ1/30秒の画像で4コマ分なので、4/30=0.13秒と非常に速いです。大リーグ最速記録を持つチャップマン投手も同じく4コマ分を要していますので、上原投手と同様に非常にボールのリリースが速いです。
 上原投手2012年度、ボールのリリースに要するコマ数は4
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 チャップマン投手、106マイル(非公式)の投球、ボールのリリースに要するコマ数は4
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ボールのリリースから捕手のミットにボールが入るまでのコマ数は
上原投手:    16コマ 16/30=0.53秒
バーランダー投手:14コマ 14/30=0.47秒
チャップマン投手:12コマ 12/30=0.4秒
しかし、投球モーションで、前側の膝を下げ始めた瞬間から捕手のミットにボールが入るまでの時間は
上原投手:    38コマ 38/30=1.27秒
バーランダー投手:38コマ 38/30=1.27秒
チャップマン投手:36コマ 36/30=1.20秒 
両者はほとんど変わりません。
上原投手、左膝が最も上がった状態、これから1.27秒後ボールは捕手のミットに入る
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チャップマン投手、右膝が最も上がった状態、これから1.20秒後ボールは捕手のミットに入る
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 これが、打者が、上原投手の球にタイミングが合わない理由の一因です。もう一つは先に挙げた、テイクバックで腕が体に隠れてボールの出所が分りにくいことです。この2つが合わさって打者は思ったよりも球が早くバットに到達するので振り遅れてしまいます。そして、球の回転数が高いので、球はバットの上を通過してゆきます。
 2011年のプレイオフで上原投手は3試合連続でホームランを打たれて、ワールドシリーズの登録から外されてしまいましたが、打者はバットを振るタイミングを通常より早くして成果を出したようです。
 しかし、上原投手のスプリッターの投球フォームは速球と変わらないほど進化したので、打者は早いタイミングで速球を狙ったとしたら、スプリッターは球速が81マイルほどで、速球よりも8マイル遅いので、タイミングが合わず打てないのだと思います。2012年のシーズン後半、上原投手のスプリッターを打者はことごとく空振りしているのはこのためだと思います。上原投手はスプリッターの握りを今シーズン変えたと言っていますので、それはボールの軌道だけでなくフォームにもその成果が現われているのでしょう。
 元阪急の日本プロ野球史上最速の球を投げたと言われている山口高志投手の球を打つには、3日前から振らないと打てないと言われましたが、上原投手の球は何日前からか分りませんが、少なくとも1日前から振らないと打てそうにありません。上原投手の球はビデオで見るとスピード以上に速く感じます。打者の多くが振り遅れており、ファウルするのが精一杯の感じです。
 
④スプリッターとのコンビネーションが良い
 この2つの球種の軌道は上下方向に関して正反対に変化するので、打者はどうしてもスプリッターのボールの上をスイングし、フォーシームのボールの下をスイングしてしまう。
 チャップマン投手と上原投手のボールのリリースに要する時間が短いのは、軸足の使い方に特徴があります。
 二人に共通して言えるのは、軸足側の膝を素早くホームプレート方向に向け、足の底の爪先側で足首を伸ばしながら、前方上空に向かって素早く強く蹴っている点です。
 上原投手の投球フォーム、軸足の蹴りだけでなく、前側の足の蹴りも強く、腰の回転速度を高めています
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 上原投手の軸足の動き(足首を伸ばしながら、前方上空にジャンプするように蹴っています)
 そのため重心は高くなり前側の膝もあまり曲がりません。前側の膝を伸ばすのは、左脚を軸にして体を1塁方向に回転させるために、必須の動作です。
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 チャップマン投手の投球フォーム、大リーグ最速106マイル(時速171キロ)
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 チャップマン投手の軸足の動き(足首を伸ばしながら、前方上空にジャンプするように蹴っています)
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2012年度のバーランダーの投球フォーム
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 ダルビッシュ投手は2012年後半に投球フォームが変わり、前屈みになり軸足の爪先側に荷重して、素早く蹴り出すようになりました。しかし、まだ上原投手に比べれば蹴り出しのタイミングが遅く、前方上空に向かっては蹴っていなく、ただ前方に蹴っています。そのため前側の膝がまだ曲がり過ぎています。結果として、前側の脚を軸にした腰の回転がまだ滑らかではありません。
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 ダルビッシュ投手
 ダルビッシュ投手の日本ハム時代の投球フォーム、体がホームプレート方向に倒れ込みながら、軸足の内側(土踏まず側)で蹴っているので素早くかつ強い蹴りはできていません。右膝が前を向くのが遅く、重心が低くなり前側の膝も大きく曲がっています。中日の浅尾拓也投手、広島の前田健太投手も同様のフォームをしています。大リーグではサンフランシスコ・ジャイアンツのティム・リンスカム投手が同様の投球フォームをしています。
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 ティム・リンスカム投手の投球フォーム

コメント

  1. CC より:

    田中は体が一塁方向に流れないけど
    しっかりと制球できてますね
    この理論とは逆になります

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