松井裕樹投手が昨年の甲子園で江川投手の1試合の三振記録を破る22三振を記録したのを知ったのは、つい最近です。その投球フォームは日本では珍しく、大リーグで主流の投げ方に似ています。
松井裕樹投手、昨年2012年の甲子園大会前の予選の成績
四球率4.3/9回、三振奪取率13.2/9回
今は西武ライオンズの菊池雄星投手が甲子園で時々大リーガーのような投げ方をしていたのですが、松井裕樹投手は全投球が大リーガーのような投げ方をしています。
松井投手の今後の活躍次第では日本の投手の投球フォームも大きく変わる可能性があると思います。
その投球フォームを大リーグの投手と比較しながら分析してみたいと思います。
松井裕樹投手(左腕)の特徴
①ボールをリリースした後、大きく体が3塁側に流れる
これは今まで甲子園では見なかったフォームで、日本の野球にとっては歴史的な光景でした。
②腕の水平からの角度は大きく、腕を投げ下ろすような投球フォームです。
これは大リーグのオーソドックスなオーバーハンドスローによく見られます。
③左肩を下げて上体を後ろに反らせながら前足を振り出している。
これは大リーグで昔行われていたハイ・キック投法(膝を伸ばしたまま前脚を高く上に上げる)でよく見られました。現在の大リーグでも程度は小さいけれど投球側の肩を下げる動作を行っている投手はいます。昨年サイヤング賞を受賞したアメリカンリーグのデイビッド・プライスDavid Priceもその一人です。今年活躍している(5月11日現在、6勝0敗)ボストン・レッドソックスのクレイ・バックホルツClay Buchholz 投手もそうです。上体をスウィングして肩を縦に回転するために有効な動作です。縦回転と横回転を加えたスリークォーターの投手には特に有効だと思います。
④腕のスウィング速度が速い、一塁側に向いていた上体が、一瞬にして3塁側に向く
これは下半身を十分に利用している(軸足の蹴りが強い)結果だと思います。
松井裕樹投手の投球フォームの特徴は、上体の軸を大きく3塁側に傾けているので、ボールのリリース後、体が大きく3塁側に流れています。上体の軸がもっと垂直に近かったらと仮定すると、オーソドックスな投球フォームであり、こういうフォームをした大リーグの投手を挙げるとすると、日本に縁のあるウォーレン・スパーンがいます。スパーンは大リーグの左腕としては最多の363勝(大リーグ歴代第6位)を挙げています。しかも第二次世界大戦に出兵して3年間を棒に振っての成績です。それがなかったら400勝は超えていて歴代2位のウォルター・ジョンソンの417勝に迫っていたでしょう。スパーンは1975年に広島東洋カープの春季の臨時コーチを勤めたことがあります。
ウォーレン・スパーンWarren Spahnの投球フォーム
松井投手のようにボールのリリース後、体が大きく3塁側に流れる大リーグで今年活躍している左腕投手を1人挙げてみましょう。
アリゾナ・ダイヤモンドバックスの若手パトリック・コルビンPatrick Corbin(23歳)です。5月11日現在5勝0敗、防御率1.75の成績を残しており、今やエースとなった感じです。今年の四球率2.3/9回、奪三振率7.0/9回と制球も優れてます。
パトリック・コルビンPatrick Corbinの投球フォーム
松井裕樹投手とパトリック・コルビン投手のフォームの比較
まず、腕の角度(水平からの)がコルビン投手の方が小さく、コルビン投手は肩の横回転が主体で、ランディー・ジョンソンの投球フォームに少し似ています。松井投手は肩の縦方向の回転が主体で、横方向の回転は小さいです。
肩の横方向の違いを生み出している大きな要因は骨盤の回転です。
コルビン投手は軸足の蹴り始めからすぐに股関節の回転(外旋)を行いながら、骨盤を回転させています。そのため、肩の横方向の回転が速く、腕の角度も水平に近くなっています。
一方、松井裕樹投手は軸足を蹴るときに、股関節を回転させず、外転だけで両脚を広げる動作だけしか行っておらず、骨盤は回転させないで前脚を踏み出しています。そして、前足が着地してから本格的に腰の捻りを戻している(腰の回りの筋肉で)ように見えます。股関節をあまり使っていないので骨盤の回転は速くはありません。ただし、骨盤は回転していかないけれども、上体を前に移動させるための軸足の蹴りは強いように見えます。この軸足の蹴りの強さが松井投手の優れている点だと思います。
松井投手は上体の軸が大きく3塁側に傾いているので、ボールをリリースした後、上体に働く重力のため、上体を3塁側に回転させようとするトルク(回転力)が働きます。そのため、上体の横方向の回転が加速され、骨盤との間に捻れが生じているのが動画からもわかります。上体の横方向の回転に引きずられるようにして骨盤が回転しています。そのため左脚が遅れて付いて来ています。
コルビン投手の場合は骨盤を積極的に回転させているので、腰の捻れが見られず、流れるようなフォームになっています。
松井裕樹投手とコルビン投手は共によく変化するスライダーを投げています。その要因は?
2人とも肩が直線的な動きをしておらず、向きはそれぞれ違いますが、円軌道を描いているからだと思います。ランディー・ジョンソンも円軌道を描くフォームでした。そのため、握りの中心を外に少しずらすだけで自然とボールに回転がかかるので、よく変化するスライダーを投げれるのではないかという気がします。
松井投手の投球フォーム、投球内容で気になる点
①前腕の遅れ(レイバックlay back)が大きい
前腕が後に大きく倒れている(レイバックlay back)
前腕の遅れ(レイバックlay back)肘の故障につながります。将来、内側側副靭帯を損傷する危険性が高くなります。
この原因はテイクバックで肘を大きく背中側に引いている(肩甲骨が後退)からです。そのため肘が先行して前腕が遅れてしまいます。これは腕がしなるような投球フォームのことです。当面は打者を打ち取るのに良い結果が出るかもしれません(タイミングが合わせづらいので)が、長い目で見ると肘の故障につながるフォームです。将来トミー・ジョン手術が必要になる危険性があります。
テイクバックで肘を大きく背中側に引いている
②腕の角度(水平からの)が大きい
オーバーハンドスローは肩、肘を故障しやすいのですが、腕の角度が上体の軸となす角度が90度よりも大きくなるほどその危険性が高くなります。
松井投手の腕の角度
腕と上体の軸がなす角度は90度よりも少し大きい程度で極端ではありませんので、問題とはならないでしょう。ウォーレン・スパーンと比べても大きな違いはありません。
③球が高めに浮き制球が悪い
左肩を下げて上体を後ろに反らせながら前足を振り出しているのと、前腕の遅れのために球が高めに浮くのではないかと思われます。
テイクバックで肘を背中側に大きく引くのはやめて、上体を後ろに反らせる角度を小さくし、軸足側の股関節の回転(外旋)を使って骨盤の回転をもっと速くすれば制球は良くなると思います。
このようにすると、必然的に腕の水平からの角度は小さくなります。肩の縦回転は減り、横回転が増えるためです。
テイクバックで肘を背中側に大きく引くのをやめると球速が落ちるのではないかと思うかも知れませんが、ダルビッシュ投手もバーランダー投手も背中側に肘を引かないで速い球を投げています。肩甲骨を後に引くよりも、その分、股関節を使って骨盤を速く大きく回転させたほうが怪我もせずに球速も上がります。
コメント
どう投げれば肘に負担をかけずに鋭いタテスラが投げれますか?
このブログの記事を読んでからずっとお聞きしたかったことなんですが、4シームのいわゆるノビ(他投手と比較した場合の落下距離の小ささ)を出そうとする場合、マグヌス効果を活かすために、ボールの回転軸を地面と平行かつ進行方向に対し垂直に取ることが求められると思いますが、そのあたりについてはどのようにお考えなのでしょうか?
このブログにおいてよく登場するキンブレルはおっしゃる通り非常に効率的な体の使い方をしており、その結果として素晴らしい球速とコントロール、副産物としての高い回転のかかった変化球を併せ持ち、実力と現時点での成績ともに最高峰の投手の一人であることにはなんの疑いもなく完全に同意しているのですが、キンブレルの4シームもいわゆるバックスピンとは異なっていて、少し傾いていますよね?
その結果少し利き腕側の方に球が流れてシュート気味の軌道を描いていますよね
無論、私はシュート回転が駄目だなんて論点のずれたことが言いたいのではなくて(実際キンブレルはそういう自分の球の軌道を完全に把握しているからコントロールがいい)、キンブレル程の球速と回転数(軸が傾いていても浮き上がって見える)があれば、キンブレルのような少し軸の傾いた4シームでも素晴らしい武器となり空振りを高い確率で取れていますが、キンブレルと同じようなフォームからキンブレルほどではない球速や回転数、具体的に言えば最高で146~8km/h程度の4シームと、マグヌス効果の活かせる地面と垂直の回転軸を持つストレートの投げやすい縦回転を主導としたフォームによる148km/hより5キロほど遅い143km/hの4シームの方が空振りを取りやすいのではないかという疑問があります。
というのも、菊池雄星投手が今年好調である理由の一つにこれまで傾いていた4シームの回転軸を地面と垂直に近づけたことによって、4シーム(特に高め)で空振りが取れるようになったことが大きかったと語っていたことから、このような疑問を持ちました。
もちろん、キンブレルのような投球フォームの利点は視線の安定からくるコントロールのよさや回転数の多さに起因する変化球の良さも非常に大きな要素なので、その重要性と有効性に全く疑いはないのですが、そのあたりについて意見を聞かせてほしいのです。
この記事の松井裕樹投手もキンブレルのような横回転のフォームに近づければ球速や回転数が向上することは容易に想像できますが、その結果奪三振率が減るケースはないのでしょうか?
150km/hを大きく超える場合と、140km/hそこそこでは少し状況が違う(マグヌス効果の大きさなど)ように思うのですが、どうなのでしょうか?
ご意見よろしくお願いします。
どう投げれば肘に負担をかけずに鋭いタテスラが投げれますか?
というご質問をいただきました。
スライダーの投げ方は人によって違うようで、実際に投手をやっている人でないと説得力のある回答は難しいという気がします。
日本人の大リーガーではダルビッシュ投手のスライダーは一番凄いと思います。大リーグ全体でもそうだと思います。
ダルビッシュ投手の投げ方を参考にするのが一番良い方法だと思います。
ダルビッシュ投手は「変化球バイブル」という本を出しており、これをご覧になるのが良いかと思います。
ダルビッシュ投手によると、変化球の中で縦スライダーが最も投げやすく、誰でもすぐ投げれるようになると述べているそうです。
アメリカンフットボールのクォーターバックのスローのように投げるのがスライダーを投げるコツだそうです。
クォーターバックの投げ方の動画を見たところ、ボールのリリース直前に手首のスナップを効かせていました。
野球のボールで手首の向きを、普通のスライダーよりももっと垂直に立て、スナップを効かせたらボールに順回転がかかるので、縦スライダーが簡単に投げれるということだと想像しています。(私はまだダルビッシュ投手の本を読んでいませんので)
普通のスライダーでは手首を捻るという動作が必要(人によっては指先で切るという人もいて、人それぞれだと思いますが)で、こちらの方がスナップを効かせるよりも難しそうです。それで、縦スライダーが最も投げやすいとダルビッシュ投手は述べているのでしょう。
投げ方のイメージとしてはこういうことなのですが、これを肘に負担をかけずにおこなうにはというご質問でした。
肘に負担をかけないというのは直球でも変化球でも大事なことです。
肘に負担をかけてしまう投げ方というのは、テイクバックで肘を背中側に大きく引くという動作をすることで、肘が高くなればなるほど肘に負担がかかってきます。
こういう投げ方だと、肘を急いで前に移動させなければならず、前腕がどうしても遅れてしまいます(レイバックlay backという)。
そうすると、肘の内側(小指側)の内側側副靭帯が引っ張られ大きな負荷がかかります。トミー・ジョン手術が必要になる可能性ま高くなります。
前足を着地したときに肘が両肩を結んだ線よりも背中側にあると非常に危険です。
肘は両肩を結んだ面よりも後ろ側に引かないことが大事です。肘は引かないで、体が前に動けば肘は体から離れてゆきます。ここが大事なポイントです。
腕には質量があり慣性(同じ速度を保とうとする性質)があります。腕をホームプレートと逆方向に動かすと、動作を止めて向きを反対にするときに肩に大きな負荷もかかってしまいます。
肘を背中側に大きく引かないでも速い球は投げれます。(ニューヨーク・メッツのマット・ハービーMatt harvey投手の投げ方が参考になります)
下半身(骨盤よりも下の部分、股関節、膝、足首、足の指の関節)を使って、右肩を思い切り前に投げ出すようにすれば、肩は円軌道を描くので、遠心力により腕は何もしなくても前に出て行きます。
脚の使い方はスピードスケートのスタートをイメージしてください。清水選手のロケットスタートの要領です。
ロケットのように右肩を出来るだけ速く前に投げ出してください。
(右投手の場合で説明します。)
また、前足を着地したら左肩が2塁側に逆戻りするようなイメージで前足を蹴ってください(曲がった膝を思い切り伸ばす)。
左肩を右肩が大きく抜き去ることが大事です。
この投げ方と先に説明した、アメリカンフットボールの投げ方を組み合わせれば、肘に負担をかけずに鋭い縦スライダーが投げれるようになるのではないかと思います。
ここで述べたことが正しいかどうかは、ダルビッシュ投手の本で確認してみてください。
回答ありがとうございます。
たしかにダルビッシュのスライダーはストレートの軌道から曲がっていて自分でもこれで「よく怪我しないなー」と思って見てました。今度変化球バイブルを買います。
投球の際のボールの回転軸の向きと空振りを取れる率とに関する質問をいただきました。
ボールにバックスピンをかけて揚力(マグヌス効果)を得るにはご指摘のようにボールの回転軸が水平、スピンアングルという表現(pitch f/xのデータで用いられている)で言えば、スピンアングル180度の時が最大となります。
したがって、腕の角度が水平よりも垂直に近くなるほど揚力は得やすくなります。
サイドスローよりもスリークォーターの方がボールは浮き上がり易くなります(ボールが伸びるように感じる)。
その意味ではクレイグ・キンブレル投手のようにサイドスローのような腕の角度だと揚力は得にくくなります。
実際、キンブレル投手のフォーシームの垂直方向の変化(重力が0と仮定したときの変化)は7.82インチ(揚力)(1インチは2.54センチ)、水平方向-5.87インチ(3塁方向に変化)、スピン角度217度(ホームプレートに向かって時計回りに)、回転数2059rpm(1分あたりの回転数、60で割ると1秒あたりの回転数)で、揚力は7.82インチと大きくはありません。(2013年度のデータ5/19現在)しかし、平均球速が96.1マイルもあるので空振り率は15.9%(100球投げて約16球空振り)と高い値です。昨年は空振り率19.0%でした(平均球速96.8マイル)。
キンブレル投手はボールの揚力が低くてもコントロールが良いから、空振り率が高いのか、それとも球速が高いからそうなのかよくわかりませんが、実際はその両方が作用して空振り率が高いと考えるのが妥当でしょう。キンブレル投手は外角低めに良くコントロールされたボールを多く投げているように思えます。ボールの揚力とは関係なしに、単純に打者は振り遅れているのかもしれません。(ボールがバットの上を通過しなくても空振りしているのかもしれません)
キンブレル投手よりも腕の角度が低くサイドハンドスローのシカゴ・ホワイトソックスのクリス・セイルChris Sale投手(左腕)のフォーシームの平均球速は92.5マイル、球速149キロで、垂直方向変化は8.73インチ、水平方向変化は7.70インチ(1塁方向に変化)、スピンアングル137度、回転数2302rpm。空振り率は7.4%とキンブレル投手に比べて半分以下と低くなっています。(2013年度のデータ5/19現在)
球速は低くても揚力の大きい浮き上がるボールを投げる投手でまず頭に浮かぶのは今はボストン・レッドソックスの上原投手です。
腕の角度はスリークォーターで、2012年度(プレイオフを含む)のデータを見ると、平均球速が89マイル、時速143キロ、回転数2500rpm、空振り率12.1%。
9月以降の好調時のデータは、空振り率15.5%、回転数2569rpm、縦方向変化11.71インチ(揚力)、横方向変化-6.31インチ。スピンアングル208度。
ボールの回転数の高い日本人投手で有名なもう一人の大リーガーはシカゴ・カブスの藤川投手です。
藤川投手の2013年度のデータ(5月19日現在)を見てみましょう。
平均球速92.0マイル、時速148キロ、垂直方向変化11.01インチ(揚力)、水平方向変化-5.56インチ(3塁方向に変化)、スピンアングル206度、回転数2470rpm、空振り率11.8%。
空振り率は上原投手と同じく高い数値です。
上原投手とクリス・セイル投手を比較すると、球速143キロの上原投手の方が球速149キロのクリス・セイル投手よりも空振り率が高くなっています。上原投手の縦方向変化11.71インチに比べてクリス・セイル投手の縦方向変化は8.73インチしかないのが原因の一つかもしれません。
上原投手とクリス・セイル投手の比較からは腕の角度が水平よりもスリークォーターの方が球速は低くても空振りは取り易いという結果が得られました。
それでは、スリークォーターよりももっと腕の角度が大きい(より垂直に近い)方がボールに大きな垂直方向変化が得られるので空振り率は高くなるのでしょうか。
ロサンゼルス・ドジャースのクレイトン・カーショーClayton Kershaw投手は腕の角度が大きい(水平から45度位)投手で、フォーシームの平均球速は92.5マイル、時速149キロ、垂直方向変化12.98インチ(揚力)、水平方向変化0.47インチ(1塁方向に変化)、スピンアングル178度(回転軸はほぼ水平)、回転数2552rpm、空振り率7.4%。(2013年度のデータ5/19現在)
カーショーのボールは回転軸がほぼ水平で回転数も高くバックスピンが大変大きいのに空振り率は高くありません。
空振り率はボールが上に浮き上がる大きさだけに依存しないようです。
カーショーのフォーシームの配球比率は62.9%と高く、スライダーが22.4%(空振り率21.1%)、カーブ11.5%(空振り率17.9%)です。
フォーシームを多く投げるために打者はボールの軌道に目が慣れてしまうのも、空振り率が低い要因かも知れません。
結論としては、高めのフォーシームで空振りを多く奪うには腕の角度は水平に近いよりも、スリークォーターの方が有利だと言えます。ただし、腕の角度は大きい(水平から)ほど有利だとは言えないようです。
松井裕樹投手は、もっと骨盤の回転を最初から使ってもう少し腕の角度を下げた方が良い結果が出るとは思いますが、キンブレル投手のように水平に近くなるまで下げないほうが良いと思います。チャップマン投手か上原投手ぐらいが無難だと思います。
あまり腕の角度を下げると、やはり高めのボールで空振りを奪うのは難しくなると思います。
上原投手、藤川投手の空振り率が高いのは、浮き上がるボールと落ちるボール(スプリッター)とのコンビネーションが要因のひとつかもしれません。
松井裕樹投手も縦スライダーの落ちるボールと浮き上がるフォーシームのコンビネーションが空振り率を高くしているのかもしれません。
このコンビネーションを崩してまでも腕を下げてしまうと空振り率は低下するかもしれません。
しかし、高めのボールで空振りを奪うことを狙うと高いレベル(プロ、もっと上のレベルで言うと大リーグ)ではホームランを打たれる危険性も高くなるので、空振りは多く取れても必ずしも勝てるとは言えません。
また、サイドスローのような腕の角度では高めの球で空振りが取れないから150キロ近くの球速が出てもだめだとも言えません。
先に述べたクリス・セイル投手の球種の配分はツーシーム(シンカー)45.6%(空振り率6.3%)、スライダー27.1%(空振り率13.4%)、チェンジアップ20.2%(空振り率14.3%)でこの3つの球種が主体となっています。ツーシームでゴロを多く打たせ、三振多く奪っています。
三振奪取率は9.4/9回(大リーグ通算)。セイル投手は現在24歳で大リーグ通算26勝13敗、防御率2.83(2013年5/19現在)
腕の角度と球速に合った投球の組み立てというのがあるので、自分の理想とする投球の組み立てに従って腕の角度を選べば良いのだと思います。