ブルワーズの青木宣親選手は日本のプロ野球(ヤクルト)8年間の通算打率が.329で首位打者3回、シーズン200安打以上を2度記録して、打率実績ではイチロー選手に次ぐ成績を残して大リーグに移籍しました。
そして1年目のシーズン、打率.288、10本塁打、2塁打37、3塁打5、50打点、81得点という成績を残しました。シーズン当初はレギュラーではなかったのですが、すぐにレギュラーに定着し、日本での実績通り、良い成績を残しました。身長は175センチ、体重は82キロと小柄ですが、長打力のある所も見せてくれました。ただ、打率が3割に届かず本人としても残念だったようです。
青木選手の打撃フォームの分析をしたいと思います。
基本的にイチロー選手を手本にしたバッティングスタイルです。体の重心が一塁側に流れながら打つ感じで、一塁に走りながら打つ、内野安打を狙ったバッティングスタイルです。
実際、青木選手の2012年度の内野安打数は34で大リーグトップでした。内野安打率は13.5%でこれも大リーグトップでした。イチロー選手の内野安打数は29で5位、ヤンキースのショートのデレク・ジーター選手は30で3位タイでした。
イチロースタイルの青木選手の打撃フォーム①、3塁ゴロ、2012年7月29日
イチロースタイルの青木選手の打撃フォーム②、浅いレフトフライ、2012年7月29日
打撃フォーム①、②とも体の重心が両足を結んだ直線上から離れていて腰が引けているので、下半身が回転せず、骨盤が投手方向まで回転して行きません。腕だけで打っているので打球の速度が鈍く、ヒットになりませんでした。
イチロー選手の打撃フォーム
青木選手よりも体の重心が両足を結んだ直線から離れていないので、骨盤は青木選手よりも良く回っている(へそが投手方向近くにまで回転)ので鋭い当たりになりました。
しかし、青木選手がホームランを打ったときの打撃フォームは違っています。内野安打を狙ったフォームではなくホームラン打者の打撃フォームです。体の回転を使って打っています。体の重心が一塁側にほとんど流れておらず、重心が動かず、重心を通る回転軸を中心に体を回転して打っています。骨盤が完全に前に向くまで体を十分に回転しています。通算756本塁打の大リーグ記録を持ち、大リーグ最強打者と言われているバリー・ボンズのような打ち方です。
バリー・ボンズ・スタイルの青木選手の打撃フォーム、6号ホームラン、2012年7月29日
バリー・ボンズの2004年シーズンの成績を見てみましょう。四球232、敬遠120、出塁率.609でいずれも大リーグ記録です。この記録はもう破られない気がします。相手の投手は完全に勝負を避け、ストライクゾーンにあまり投げてきませんでしたが、それなのに.362という高打率を残しています。
バリー・ボンズのホームランを打ったときの打撃フォーム
青木選手よりもさらに1塁側に体全体が回転しています。また回転速度も速いです。前足の踏み出しも小さくコンパクトで素早い打撃フォームです。大リーグ史上最高の、理想的な打撃フォームだと思います。
バリー・ボンズの打撃フォームの特徴
①ボンズのバットのスウィングが素早い一番の要因は、両足を投手方向に一瞬にして捻りながら素早く強く短く蹴っている点です
②歩幅スタンスが狭く、前足のステップも小さい。
歩幅が広すぎると、後ろ足に体重が乗りづらく、体全体を回転しづらくなります。
前足を小刻みに動かしていますが、これは後ろ足に体重がよく乗るようにタイミングを合わせているためだと思います。この動きは多くのホームラン打者に見られます。
②後ろ足の蹴りが強く、体が前に行くのを膝を伸ばしながら前足を強く蹴り、完全に止めている。
そのためには、体の重心は前足と後ろ足を結ぶ直線上を移動し、完全停止します。この停止した重心を通る回転軸を中心に体全体が回転してゆきます。回転軸が動かないで打っているので頭の動きもなく目線が安定しています。
青木選手はバリー・ボンズのようになりたいと言っており、カウントが有利になった場合には、イチローからバリー・ボンズに打撃スタイルを変更しているようです。
これから先、さらに良い成績を残すには全ての打席でバリー・ボンズのような打撃スタイルにした方が良いような気がします。青木選手はボールにバットを当てる率は高いのですが、イチロースタイルでは骨盤が十分に回転して行かず、その結果、打球に鋭さがなく、アウトになる率が高くなっています。完全に打ち損ねた当たりが内野安打になっている状況です。
また、ボンズ選手のように前足をあまり高く上げないほうが打率は上がるでしょう。