大リーグで主流の投球フォーム、つまり投球動作の後半に体が一塁方向に流れるようなフォーム(右投手の場合)をした投手は日本のプロ野球界にはいないと思っていましたが、西武ライオンズにいました。西口文也投手です。2012年シーズンを終って通算182勝115敗の現在40歳のベテラン右腕です。
西口投手の投球フォームを見てみましょう。
後ろからのフォーム、時速143キロ、2011年8月
横からのフォーム①、2011年4月
横からのフォーム②、2011年6月
西口投手の投球フォームは、非常に躍動感があり、歩幅ストライドが多きいのが特徴です。しかし、ストライドが大きさ過ぎて、球速が143キロと思ったほど出ていません。前足が着地した時には投球動作がすでにかなりの部分、終っており、上体は正面を向いており、上体がすでに前傾姿勢になっています。また前側の足がホームプレート方向を過ぎて、一塁側に着地しています。
ストライドは大きければ球速が出るものではないようです。火の玉投手と呼ばれた豪速球投手のボブ・フェラーのストライドはあまり大きくありませんが、100マイルを超える球を投げていました。
ボブ・フェラーの投球フォーム、前足を着地するまで腕がまだ振り出されていません
平均球速(初速と終速の平均)98マイル(時速158キロ)を記録したときの投球フォーム、初速は174キロだった(陸軍の計測装置で計測)
ボブ・フェラーのストライドは大きくない
また、現在、公式の大リーグ最速記録105マイル(時速169キロ)を持つアロルディス・チャップマン投手はストライドが体の120%と大きいのですが、チャップマン投手もストライドが大き過ぎた時には球速は低めです。
西口投手の右腕のテイクバックが最大のときのフォーム
このときに前足が着地するように、ストライドを小さくした方が球速は上がると思います。あるいは前足を踏み出す速度を上げ、右腕のテイクバックのタイミングを遅らせ、前足の着地とテイクバックが最大になるタイミングを合わせるかですが、ストライドを小さくした方が良いでしょう。
西口投手はストライドが大きいためか右脚の大腿内転筋を痛めることが多いからです。
大腿内転筋は軸足を蹴るときに膝の向きを横からホームプレート方向に向けるときに使う大腿の内側の筋肉です。ストライドの大きな投手が痛めやすい筋肉です。
藤川球児投手もストライドの大きな投手で2012年9月に傷めたそうで大リーグでの投球に不安が残ります。
大腿内転筋の場所
他に良くない点を挙げると
①前足を着地した後も直ぐに体の重心(ヘソのあたりで腹と背中の間)が止まらず動いている
大リーグで良い成績を残す投手は前足を着地してから、ボールのリリースまでは体の重心が止まってほとんど動きません。軸足(後ろ足)を蹴って前に体が動く直線的な運動のエネルギーを投球に必要な回転エネルギー(肩の縦回転、横回転)に変えています。重心の直線的なエネルギーは投球に役立たないからです。
これは、軸足(後ろ足)を蹴って、体の重心が前に動くその延長線上に前足の着地点が来ていないことが大きな原因です。
また、体を背中側に反らせるタイミングが早すぎるのも原因です。そのため前脚の傾きが大きすぎです。
②前足を着地した後、グラブを抱えた腕を脇に抱え込んでいない。
これは多くの日本人大リーガーに見られる特徴で、上体の回転速度にブレーキがかかってしまいます。これはフィギュアスケートのスピンでは、手足を体の中心に近づけて回転速度を上げているのと同じ理由によります。