中日ドラゴンズの吉見一起投手が右肘を故障し、内側側副靭帯再建術(トミー・ジョン手術)をするそうです。吉見一起投手は今回で3度目の手術になるそうです。吉見一起投手は昨年は右肘頭骨棘を骨折しており、それ以外にも肘、肩の故障を過去何度も経験しているようです。
中日の投手には故障で選手生命を短くした人が過去にもいます。初先発でノーヒット・ノーランという快挙を達成した近藤真市投手、また中日ドラゴンズ史上最高の左腕、今中慎二投手もそうです。
この3人に共通している投球フォーム上の問題点は腕が遅れて出てくることです。
具体的にはテイクバックで肘を背中側に大きく引き過ぎ、なおかつ肘を高く上げ過ぎている点です。前足を着地した段階でもまだ、肘が背中の後にあるために、肘を球速に前に出す必要があり、そのため前腕が遅れて出てきます。これは前腕には質量があり慣性(同じ速度を保つ性質)があるためです。
こういう投げは良く言えば、腕がムチのようにしなるような投げ方と言えますが、肩、肘に大きな負荷がかかる投げ方でいずれ故障する危険性があります。
近藤投手は2年目に肩の手術、4年目に肘の手術(トミー・ジョン手術)をしており、活躍できたのは2年間だけでした。
今中投手は中日球団史上最高の左腕投手でしたが肩の故障に泣き、30歳という若さで引退しています。
吉見一起投手の投球フォーム
近藤真市投手の投球フォーム、初先発でノーヒット・ノーラン
今中慎二投手の投球フォーム
http://kitchensink11.seesaa.net/auth/article_preview/
大リーグでトミー・ジョン手術を行なった投手の共通の投球フォーム上の形、逆W(inverted W)
両腕がWを逆さにした形になっている。肘をムチのように使う投球フォームになってしまい、肘の故障につながります。前足を着地した際に逆Wになっていると非常に危険です。
理想的な肘の使い方(背中側に引かない、高く上げない)
ニューヨーク・メッツのマット・ハービーMatt Harvey
現在、大リーグで注目の投手(24歳)、メッツではトム・シーバー以来のエースと言われている。
緩やかなフォームから平均球速95マイルの球を投げる。
肘、肩を故障しにくい投球フォームで球速もあり、注目の投球フォームです
大リーグで300勝以上挙げるための投球フォーム上の秘密
(肩、肘に負担がかかっていない)
肩、肘を使って投げない
具体的には
①テイクバック(意識としては腕を下げるだけ)で、肘を背中側に大きく引かない、肘を高く上げない
②両肩と右肘が一直線上にくる姿勢のまま、腕を振らない(何もしない)
③下半身(股関節よりも下の部分だけ)だけを使う
②の姿勢を保ったまま、上半身は何もしないで、下半身だけを使って右肩が円軌道(直線的な動きはだめ)を描くように、スムースに加速させる。上半身は前足を着地した際、腹筋を使って上半身を前に倒すだけ。
直線的な動きだと腕が前に出て行かない。
円軌道だと遠心力で腕がひとりでに前に回転してゆく。
肩が円軌道を描くと回転ブランコのように腕はひとりでに回転するイメージ
ウィーンの回転ブランコ
イメージで投球方法を表現すると
右肩をスムースに円軌道をイメージしながらホームプレート方向に投げ出す(チャップマン投手の場合で言うと、キューバのミサイルのイメージ)
投げ出したいのは右肩だけです。体の左側は必要ありません。
右肩が素早く回転してさえゆけば、肩より下の姿勢はどうあろうと関係ありません。それは人それぞれの投球スタイルで違ってきます。体が開くとか開かないとかも関係ありません。極端な話、前足を着地しないでジャンプしたままでも問題ありません。ただ、前足を着地したほうがさらに右肩が加速するのでそうするだけの話です。上原投手は前足をほんの一瞬着地する程度です。ジャンプして投げている感じです。また、ニューヨークヤンキースのショートストップ、デレク・ジーター選手は三遊間の球を捕球した後、ジャンピングスローすることで有名です。右肩さえ回って行けば空中でも強い投球は可能です。また、バレーボールのジャンピングサーブも同様です。
前足を着地する際は、体の左側が完全に止まるようにしなければいけません。
イメージ的には左の股関節を2塁方向に逆戻りさせる意識を持つことが大事です。それで左の股関節がちょうど止まるようになるはずです。
トム・シーバーTom Seaver (1967-1988)
身長 6′ 1″ =約185.4 cm
体重 206 lb =約93.4 kg
大リーグ通算311勝205敗、防御率2.86の剛球投手
サイヤング賞3度受賞、ノーヒット・ノーラン1回。
ドン・サットンDon Sutton(1966-1988)
身長 6′ 1″ =約185.4 cm
体重 185 lb =約83.9 kg
大リーグ通算324勝256敗、防御率3.26
23年間の大リーグ歴のうち21回で10勝以上の成績を残しました。また、故障者リストに載ったことがありません。
コメント
投げる時にどこに意識をおけばいいのですか。
あとテイクバックはどのようにとればいいのですか?
いつもブログ拝見しとても参考になり自分の中で投球のイメージなどが大きく変わりました。いくつか質問したいのですが自分は投球の時に脚をあげて降ろし移動するところに最近違和感があるのですが脚を上げ下げするとき何かコツというか意識することはありますか?ロドニー投手のように脚を上げずに移動するということも解決策の一つなるのでしょうか?たまに着地が上手くいくときはいいボールがいくので着地の形がとても重要な気がします。
また日本の指導者達がいうヒップファーストですが脚を上げてお尻から移動し脚が二塁方向に行きますがMLBの選手はそういう形が見られませんが何か意見があれば教えていただきたいです。
すみませんがお答えできる時間があればよろしくお願いします。
質問内容)
投げる時にどこに意識をおけばいいのですか。
あとテイクバックはどのようにとればいいのですか?
回答)
投球フォームが固まって安定していて調子の良い人はおそらくあまり意識するところはないのでしょう。
新しいフォームを試している人は、あまりいろいろ意識すると、手足がうまく連動しなくてうまくいかないかもしれません。
意識する所はやはり下半身が大事なような気がします。
投球する場合、肩から、肘、手に意識が行ってしまいがちになります。
しかし、速くて、制球も良く、怪我もしない投げ方をするには下半身で球速を生み出す意識が大事です。
下半身と言っても特に股関節から下に意識を置くことがとても大事です。
腰の捻りは動きが遅く、効率的ではありませんので、意識しないほうが良いと思います。その分、股関節の捻りを利用するほうが効率的です。
右投手の場合で説明します。
右の股関節は十分に曲がっているうちに利用しないと速い球は投げられません。
ワインドアップをして、左足が上がった状態で右の股関節を十分に曲げる。右膝をあまり曲げない人では上体が少し前かがみの姿勢(ダルビッシュ投手のように)になります。
あるいは、最初上体が直立で膝も股関節もあまり曲げないフォームの人は、重心を少しホームプレート方向に移動させながら右膝を曲げ右股関節も曲げる。
いずれのフォームでも右股関節が十分に曲がった内に骨盤を回転させながら股関節を思い切り伸ばすことが大事です。
膝がホームプレート方向に45度ぐらい向いてきたら、今度は膝を思い切り伸ばし、足関節、爪先の関節と順次思い切り伸ばして行くことで球速に必要なエネルギーの7割ぐらいは生み出されるのではないかと思っています。
これがうまく出来ていれば、後は少しづつさらに球速を上げるためのコツを実践すれば投球フォームば完成に近づくと思います。
テイクバックというと腕を2塁方向に引くというイメージがありますが、右腕はグラブの中に構えた上体から力を抜いて自由落下させる程度で十分です。重力によって、腕は振り子のように後に行き、体が前に移動することと合わせて、特に力を入れなくても自然と後ろに移動する程度で十分です。
腕を強く引いてしまうと、腕の慣性(質量)のため肩に大きな力がかかってしまい怪我をしやすくなります。
上で述べたように下半身がうまく使えていれば腕は意識しなくても自然と回転してゆきます。
まずは右の股関節を十分に曲げ、骨盤を回転させながら思い切り伸ばすことが第一歩です。
質問内容
足の上げ下げのコツ
投球時のヒップファースト
着地の位置が良いと軸足を踏み出して得た体の運動エネルギー(直線的な動き)を回転エネルギー(上体が前に倒れて肩が縦に回転するエネルギーおよび骨盤が水平に回転し肩が水平方向に回転するエネルギー)に変えるのが容易になります。
体の重心が進む方向の延長線上に前足を着地することが、最も効率よく直線的なエネルギーを回転エネルギーに変える方法です。
前足の上げ下げもやり方は人によってさまざまです。
昔の投手はハイキック投法(英語ではhigh leg kickという)といって前足を高く上げて投げていました。膝を伸ばして高く上げていました。大リーグではフアン・マリシャル、ウォーレン・スパーンが有名です。伝説の左腕サンディー・コーファックスもそうでした。日本の投手では別所毅彦、村田兆治、西本聖といった投手がそうでした。西武の工藤公康投手もそうでした。
ワインドアップで左足を高く上げた際、上体は左肩が右肩よりも高くなり、上体の軸が2塁側に倒れ、右の股関節を中心に上体を回転させながら上体を起こしてゆきますが、左脚に働く重力によるトルク(力のモーメント)のためこの動きは楽に加速してゆきます。
伸びた左膝を伸ばしたまま前に向けてゆくので上体を1塁側に回転させてゆくトルクも同時に発生します。
右肩を縦に回転させるトルクが主体ですが、水平に回転させるトルクも発生しています。
したがって、軸足の蹴りはじめから、骨盤も緩やかではありますが回転しているところが大事です。
最近の大リーグの投手も軸足の蹴り初めの早い時期にすでに骨盤は回転させています。その結果、軸足の膝がホームプレート方向に向くタイミングも早くなり、右膝を伸ばすタイミングも早くなります。したがって、体の重心も低くなりません。
軸足側の股関節を十分に内旋させ、右膝の皿の向きも出来るだけホームプレート方向を向くように、さらに右の脛の角度も前傾するように膝を絞るようにしてから、右の股関節を外旋させることで骨盤は回転してゆきます。
右の股関節を曲げた状態から伸ばす動きも同時に非常に大事です。
右の脛の角度が前傾して、右膝の皿の向きもホームプレート方向に向いてきた状態で、右の股関節を力強く伸ばすと骨盤が回転しやすくなります。
出来るだけ早く、右の脛の角度を前傾させるという意識が大事だと思います。
右の股関節を十分に曲げ、右の脛も前傾(ホームプレート方向に)している状態で、骨盤を回転させながら思い切り強く右の股関節を伸ばすというのが、今大リーグで良い成績を残している投手の共通した特徴だと思います。
イメージとしては体の右半分だけが思い切り前に飛んでゆく(ミサイル、ロケットのように)感じです。体の左半分は前に飛んでいかないように前足を着地して急ブレーキをかけます。急ブレーキをかける際に前足の位置が悪いと、ブレーキのかかりが悪くなります。前脚一本で立っていられるように体の重心が進むその延長線上に左足が来なくてはいけません。
その際、前脚の膝は軽く曲げて着地し、思い切り伸ばして左の股関節を2塁方向に押しも戻す意識を持たないとブレーキの効きは悪くなりますので、肩の回転(縦、横方向いずれも)は加速してゆきません。
骨盤の回転は軸足の蹴りはじめから行なうというのが大リーグで主流の投げ方だと思います。
日本では前足を着地させる少し前まで骨盤を回転させないように体の重心を前に移動させる投げ方の人が多いようです。これがヒップファーストでしょうか。
体には質量のため慣性が働きます。止まっている状態では永遠に動かず、一定の速度で動いている場合にはその速度を保つ(速さと向きいずれも変わらない)性質があります。
等速度で回転している物体は摩擦とかがなければ、永遠に回転し続けます。
回転速度を加速するにはトルクが必要です。
日本では、前足を着地する少し前から軸足を蹴って骨盤を回転させて、前足を着地したときに出来る腰の捻りを戻すことで骨盤の回転を加速させているようです。
軸足を強く蹴るときにすでに右の股関節が伸びてしまっているので、骨盤の回転は速く行なえません(ヒップファーストでは、というかヒップファーストをずっと続けると)。
右の股関節が十分に曲がっている段階で、股関節は強く伸ばさないと、体には慣性があるので間に合いません(急には加速できません)。
それで、軸足の蹴り始めの段階からすでに骨盤を回転させる意識が必要になると思います。
意識としては、軸足の蹴りだけで、前足を着地する前に、投球が7割程度完成されているイメージが大事だと思います。
前足を着地しないでも速い球が投げれるようでなければいけません。
そうすると、左肩の開きが早すぎるとかはあまり関係がなくなります。
前足を着地することで球速はさらに加速してゆきます。
マットはけがをしました何故