良い成績を残す選手は軸足(右投手では右足)の蹴りが強く、投球動作後半には軸足が高く上がります。また前足も強く蹴っています。
上原投手の投球フォームは巨人に入団した1999年にくらべて今は大きく変化しています。2009年に大リーグのボルチモア・オリオールズに入団して、2011年の7月末に現在のテキサス・レンジャーズにトレードされたのですが、大リーグに入団してからも投球フォームの変化がありました。
2011年から現在の投球途中に体が踊るような躍動的なフォームに変わっています。右足の蹴り方が強くなっています。また、前足の蹴りも強くなりました。結果として、右肩が前に速く出るようになり、打者は球速の割りにボールが早く手元に来て振り遅れることが多くなっています。
また、投球動作の後半は体が1塁方向に向くようになりました。これは大リーガーの多くに見られる投球動作です。
上原投手の投球フォームの変化
1999年巨人入団1年目、20勝達成
2010年オリオールズ、前脚の膝の曲がりが少なくなりました。重心の位置が左足の上を通過するようになりました。その結果、腰の回転速度が速くなりました。
2011年オリオールズ、右足の蹴りが強くなりました。また、左足の蹴りも強くなっています。その結果、腰の回転速度がさらに速くなり遠心力で右脚が大きく高く外に振り出されています。
大リーグでも良い成績を残す選手は軸足の蹴りが強く、投球動作後半には軸足が高く上がっています。
シンシナティ・レッズのアロルディス・チャップマン(最速105マイル、三振奪取率15.3/9回)
アトランタ・ブレーブスのクレイグ・キンブレル(最速100マイル、三振奪取率16.7/9回)
広島カープで炎のストッパーと呼ばれた津田恒美投手、躍動感溢れるピッチングでした。(津田対バース 1986.05.08 甲子園9回裏2死満塁でバースを空振り三振に取る)
次に、今年パリーグ最高の防御率1.71を残した日本ハムの吉川光夫投手の投球フォームを見てみましょう。
吉川投手は2012年度、14勝5敗、防御率1.71、WHIP0.88(リーグ最高)の好成績を残し、ダルビッシュ投手が抜けた穴を完全に埋め、リーグ優勝に貢献しました。
昨年までは制球が悪く、四球率は4.7個/9回でしたが、今年は2.3個/9回と格段に良くなりました。四球を気にせず腕を思い切り振って良い結果につながったようです。映像からも腕が体にぶつかるほど振れているのがわかります。
すばらしい投球フォームをしています。
日本ハム吉川光夫投手(球速151キロ)
良い点
①右足を上げた時に体が開いていない(打者に背中が向いている)。
②右足を地面に着くまで体が開かずにいる。
③軸足(左足)が曲がり過ぎていない。
むしろ少ないぐらい。クレイグ・キンブレルと同じぐらい。曲がり過ぎると強い蹴りが出来ません。藤川球児投手は軸足の曲がりを少なくしてから大活躍するようになりました。また歩幅が足の蹴りの強さに合った大きさになっている。広すぎると、体が開きやすいように思えます。
力まず無理して投げていないように見えますが、球速は151キロも出ています。身長は178センチと大きくないのですが、全身を使って投げているおかげでしょう。脚の蹴りの強さを上原投手のようにもっと強くし、重心の位置を着地した前足よりももっと3塁側にすれば腰の回転が速くなりキンブレル投手のようにもっと球速が出そうです。最近左肘を怪我したしたのが気がかりですが、腰の回転速度が上がれば腕を思い切り振らなくても遠心力で腕が自然と前に振り出されるので、肘への負担も軽くなると思います。
軸足の蹴りを強くするのは大事なのですが、意外と気づかないのが前脚も強く蹴るのが大事なことです。この2つを行なうことでその効果は飛躍的に高まります。キンブレル投手のような瞬発力が得られます。一瞬にして投球動作が完了する感覚になるはずです。
キンブレル投手のように少し曲げた状態で着地し、膝が真っ直ぐなるように強く蹴って体を後ろへ戻す感覚が大事です。そうすると下半身に急ブレーキがかかり、腰の回転速度が速くなり、腕を振りに行かなくても自然と前に振り出されます。みなさんも試してみてください。驚くほどの違いにびっくりするはずです。
日本人最速の161キロを出したヤクルトの由規投手はその感覚を「0から100」と表現しています。0というのは腕の力を完全に抜くことで、腕を意識的に振りに行く必要はなく、最後ボールを離す瞬間に指先に100パーセントの力を込めることです。
由規投手の投球フォーム(時速161キロ)(前足も後ろ足も強く蹴っている)
上原投手も前足の蹴りを強くしたため、体がジャンプして空中で体が回転しているように見えます。
津田投手も軸足だけでなく前足の蹴りも強い選手でした。
次に同じく日本ハムの斎藤佑樹投手の投球フォームを見てみましょう。
斎藤投手は2011年は6勝6敗、防御率2.69、2012年は5勝8敗、防御率3.98でした。何か壁にぶつかっているようですが、どこが悪いのでしょうか。投球フォームは甲子園で活躍した時と比べて大きく変わってしまいました。
2012年の斎藤佑樹投手、楽点戦で松井選手にホームランを打たれる
甲子園夏の大会、打者は鹿児島工の代打の切り札、今吉晃一選手
甲子園時代の方がはるかに良い投球フォームをしています。
軸足の蹴りが甲子園時代は強かったのですが、今は弱弱しくなっています。その結果、右肩が前に出る速度が遅く、体が正面を向いた時点でもうボールが手から離れて行ってます。ボールのリリースポイントがずい分と後ろになっています。腕の振りだけで投げている感じです。前足が地面に着く前にもう腕を振り始めています。甲子園時代は逆に、地面に足が着いてから一気に腕を振り始めています。
甲子園時代の投球フォームは現在アメリカで主流の投球フォームに非常に近くなっています。投球後1塁方向に体が向いており、腰の回転をうまく使っています。どうしてフォームを変えてしまったのか理由がわかりません。
今すぐにでも元のフォームに戻した方が良いと思います。ただし、セットポジションのスタンスがスクエアなのでクローズド(打者に背中を向ける)に変えてもっと腰の回転速度を速くした方が良いでしょう。甲子園時代が球速が一番あり、確か時速149キロ出ていたので、そうすれば球速は確実に150キロを超えるでしょう。
ダルビッシュ投手の投球フォーム(体が開いていない、背中が打者に向いている)
2012年8月、13勝目を挙げた時のフォーム
理想的な軸足の蹴り方
大リーグ最速105マイル(時速169キロ)を投げるシンシナティ・レッズのアロルディス・チャップマン投手は19歳の頃は軸足の蹴り方が弱く、それでも時速150キロ程度だったのですが、現在の速くて強い蹴り方、おそらく大リーグ史上最高の蹴り方になって球速が一気に10キロ以上アップしました。
この蹴り方をマスターすれば球速は誰でも速くなる気がします。
チャップマン投手が106マイル(時速171キロ、レーダーガンによる非公式の記録)を投げれた最大の理由
その秘訣は膝の向きを素早くホームプレートの方向に向けるからです。
膝の向きが横向き、つまり1塁側(左投手の場合)を向いたままでは強い蹴りはできません。
チャップマン投手の足の蹴り方は陸上競技のスタートに似ています。チャップマン投手のニックネーム、キューバのミサイルのように体が前方に飛び出て行きます。
コメント
はじめまして
投球フォーム練習のの参考にさせて頂いております。
質問させて頂きたいのですが
前脚も強く蹴るのが大事なことです。と書かれていますが
動画をみても前足の蹴りというのがよくわかりません
わかりやすく教えて頂けないでしょうか?
あと良い成績を残す選手は軸足(右投手では右足)の蹴りが強く
とありますが、アマチュア野球・学生野球では
軸足の足の甲での地面の押し付けが大事、これが出来てないと
ボールが高くなると言われますが
蹴ると押さえつけるでは相反するようですがどうおかんがえですか?
よろしくお願いいたします。
質問内容:
前脚も強く蹴るのが大事なことです。と書かれていますが
動画をみても前足の蹴りというのがよくわかりません
わかりやすく教えて頂けないでしょうか?
あと良い成績を残す選手は軸足(右投手では右足)の蹴りが強く
とありますが、アマチュア野球・学生野球では
軸足の足の甲での地面の押し付けが大事、これが出来てないと
ボールが高くなると言われますが
蹴ると押さえつけるでは相反するようですがどうおかんがえですか?
よろしくお願いいたします。
回答:
前足の蹴りについて:
前足の蹴りとは軽く曲げて着地した前脚の膝をすばやく伸ばすことです。その結果、前足側の股関節が押し戻され骨盤が回転します。体の重心も若干押し戻されますが、全体として投球側の肩はホームプレート方向に加速されます。実際は、体全体がホームプレート方向に移動するので、見た目には前足側の股関節も体の重心も一瞬ほぼ停止するかのようになるので、前足の蹴りというのは分かりにくいかもしれません。
骨盤を回転させる方法としては、前足の蹴りだけではなく、股関節を出来るだけ外旋させ、その後、内旋させる方法もあり、投手によってその比率と大きさは違っています。
レッドソックスの上原投手は後ろ足の蹴りよりも前足の蹴りを主体に骨盤の回転を急速に行っています。その結果、重心も高くなり、ジャンプするように体が一塁側に向いています。
前足の蹴りの効果を実感する方法について:
①セットポジションで構えて、前足側のつま先をホームプレート方向に向け、全体重が前足にかかるように上体を前傾させます。前足側の膝は控えめに曲げます。軸足側の膝は真っ直ぐ伸びた状態になります。ストライド(両足の開き)はいろいろ大きさを変えて試してください。
②後ろ足はつま先で触れている程度にします。
グラブ側の腕は実際の投球のようにホームプレート方向に、グラブは3塁側を向くように(右投手の場合)します。投球側の腕は力を抜いて下げたままにして、肘をわずかに曲げ、右手の甲を右側の臀部に軽くつけたままにしておきます。
③前足側の膝だけを強くすばやく伸ばします。すると、骨盤が回転し、投球側の腕が軽く前に振り出されます。
④ ③の動作に加えて、上体をすばやく水平近くになるまで倒します。
⑤ ④の動作に加えて、グラブ側の腕をすばやく引きつけ脇を締めるようにします。
③よりも④、④よりも⑤の方が投球側の腕がホーププレート方向にすばやく振り出されるのがわかると思います。
ノーラン・ライアンのように腕はサイドスローのように振り出されます。もし、グラブ側の腕をすばやく脇に引きつける際に、グラブ側の肩をすばやく下げるように引きつけると、投球側の腕の角度は水平よりも上がり、スリークォーターに近くなります。軸足の蹴りを使わないでも十分に腕は振り出されます。これに軸足の蹴りを付け加えれば球速はさらに上がります。
軸足の蹴りと足の甲の押さえつけについて
体の重心を下げるようにして股関節の外転(開脚動作)だけで蹴ると、強く蹴ったつもりでも甲に加重がかからず、投球側の肩は上がらずに、肩の縦回転が出来ないので、上体も後傾気味になり、ボールは高くなるのではないかと思います。
上体をホームプレート方向へすばやく前傾させると同時に、①曲げた足首、膝をのばす②曲げた股関節を伸展させる③前かがみになった上体を真っ直ぐに伸展させる(伸び上がる)④後ろに反った上体を真っ直ぐにする、いずれか一つ以上を行い、軸足と投球側の肩までが真っ直ぐに伸びるようにすれば、投球側の肩は上がり、肩の縦回転が出来るので、ボールの押さえが利きボールが高くなることはないと思います。
この場合、軸足の強い蹴りと、足の甲の地面への強い押し付けが同時に起き、かつボールも高く浮くことはないと思います。
斎藤佑樹のフォームが変わったのは怪我によるものです
肩の関節唇損傷で、過去この症状から手術して復帰し活躍した例が無いため手術回避しています
結果的に以前のような腕を振り切るようなフォームはできません。